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恩田陸作品

ネバーランド 木洩れ日に泳ぐ魚
蛇行する川のほとり 私の家では何も起こらない
黒と茶の幻想 (上) 黒と茶の幻想 (下)

ネバーランド/恩田陸 著


学校っていうのは、表面では同年代の友達とワイワイやっているようにみえるけれ ど、閉塞間があったり、みんなとかけ離れないように合わせたり、1人だけ浮いたり 目立ったりしないように気を使ってるところがあるのだと思う。
真面目すぎると引かれちゃう。かっこ悪い。 だからといって、陽気でハイになりすぎても引かれちゃう。 見えない軸に合わせつつ、仮面を被っているところがあるのかもしれない。

寮という、学校からも家庭からも離れた大人のいない世界。 のびのびとできる反面、とても孤独だ。 一見、普通にみえるどこにでもいそうな4人の高校生たち。 その裏には思いもしなかった二面性があり、ゲームをきっかけに明らかになっていく。 そして生まれる友情。

それぞれが辛い経験があるからこそ、他人の痛みに敏感になれるのだと思う。
抱えるものは、1人1人バラバラで重い過去もあります。 深刻にならずにさらさらと読めたのは、7日間という非日常の中での濃密な時間。
嫌なことを拭い去るかのようにお酒を飲んだり、テニスをしたり、早朝の中を走ってみたり。 さわやかでキラキラとした青春時代。素敵な1冊なのでした。

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[ミステリー・サスペンス]


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木洩れ日に泳ぐ魚/恩田陸 著


明日からはお互いに別々の道を歩み始める一組の男女。今夜は、2人で過ごす最後の夜に なる。物語は、部屋の中のみ。登場人物も2人だけ。記憶を辿り、過去を回想し、次々に 明らかにされる真実とは・・・・・・

ぴりぴりした緊張感に、お互いを探り合う心理戦。平穏を装いながらも、静かに、じわじ わと相手を追い詰めていく。ひんやりした感触に、胸騒ぎ、あっと驚く展開に一気に惹き 込まれます。
こうだと思っていたものが、引っ繰り返り想像もしなかった展開。そのたび2人の動揺が 伝わってきてハラハラするのです。

朝までという限られた時間は非日常的で、その数時間の間には、2人の関係性が大きく変 わります。
部屋の中だけという密封された空間は、息苦しく閉塞感漂うものだけど、その濃密度がな んとも心地よく奇妙な気分に浸れた。

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[ミステリー・サスペンス]


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蛇行する川のほとり/恩田陸 著


演劇祭の舞台装置を描くため、高校美術部の先輩、香澄の家での夏合宿に誘われた毬子。 憧れの香澄と芳野からの申し出に有頂天になるが、それもつかの間だった。その家ではか つて不幸な事件があった。何か秘密を共有しているようなふたりに、毬子はだんだんと疑 心暗鬼になっていく。そして忘れたはずの、あの夏の記憶がよみがえる。少女時代の残酷 なほどのはかなさ、美しさを克明に描き出す。(「BOOK」データベースより)

蛇行する川のほとりに、揺れるブランコ、「船着場のある家」と、「塔のある家」
こんな舞台設定がもう美しく、まるでおとぎ話の世界に迷い込んだかのよう。
かつて少女たちがいた場所、あの風景、照りつける太陽や夏の匂いが漂ってきそうです。

毬子、芳野、香澄、真魚子の4人の魅力的な少女たちが登場する。私はその中でも毬子が 一番好き。透き通るような透明感があり、ガラス細工のよう。儚げで、終わりがくるとわ かっている一瞬の輝き、だからこそ見つめていたい。愛おしくなるのだ。

夏休みの始まり――何か素敵なことが起こるんじゃないかと期待して胸弾ませていた。実 際には何も起こらないのだけど、始まりの頃はいつもこの夏が永遠に続くと思っていた。 この本には、こんなことあったらいいなという憧れがギュっと詰まっているのです。

合宿は、2人の個性ある少年も加わり、封印された秘密が暴かれていく。みんな何かを隠 している。なのに素知らぬふりを装い、相手の反応を窺う。情報は小見出しに・・・・・・
核心へと着実に近づいていってるのに、パーツが上手く繋がらない。いくつかの断片だけ が頭に残り、終盤でそれが繋がった時、胸がキリキリと痛んだのです。

少女から大人へと一歩近づく時――それは何かを諦め、何かを受け入れていくことなのか もしれない。残酷さ、儚さ、初々しさ、それぞれの個性と心の移ろいが丁寧に描かれてい る素敵な作品です。

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[ミステリー・サスペンス]
→テーマ別[夏休み][乙女のための本]


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私の家では何も起こらない/恩田陸 著


この家、あたししかいないのに、人がいっぱいいるような気がする・・・・・・
ようこそ、丘の上の幽霊屋敷へ。恩田陸が描く、美しく不穏なゴーストストーリー。
小さな丘の上に建つ二階建ての古い家。この家は、時がゆっくり流れている。幽霊屋敷と 噂されるその家にすむ女流作家は居心地のよいこの家を愛している。
血の海となった台所、床下の収納庫のマリネにされた子どもたち・・・・・・いったい この家にはどんな記憶が潜んでいるのだろう。幽霊屋敷に魅了された人々の美しくて優 雅なゴーストストーリー。恩田陸が描く幽霊屋敷の物語。ラストには驚愕の書き下ろし 短編が! (Amazon.co.jpより)

丘の上に建つ家はとても古い。古いということは、それだけたくさんの人が入れ替わり、 様々な記憶、思い出が積み重ねられている。過去に人が死んでいたって不思議ではない。 この家に住む無数の幽霊たちは、怖がらせようとしているのではなく、ただ静かに佇ん でいる。でも歴史が長い分ギュっと濃縮された思いは、どこかしら現在の住居者に作用 するのかもしれない。

ひたひたと忍び寄る気配と息遣い。何かがいるようなのに、みえそうでみえない。少し ずつ過去が明かされていくのだけど、やっぱり核心は曖昧なままだ。どうやら土地じた いが不吉な場所のようです。

マリネにされた子どもや、殺しあった姉妹など恐ろしい話が続く中、『俺と彼らと彼女 たち』では和やかなムードを醸し出している。こちらをじっと窺う幽霊たちが頼もしい 存在に思えてきて、彼らの声をもっと聞きたいと思った。

『附記・われらの時代』では一転、さっきまでいた場所が遠ざかる。世界を俯瞰してみ ているような、でもうつらうつら夢の中を漂っているような不思議な感触。いつのまに か「それ」が侵食し呑み込まれてしまったみたいに・・・・・・

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[SF・ファンタジー・ホラー]
→テーマ別[幽霊]


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黒と茶の幻想 (上)/恩田陸 著


元同級生である利枝子、彰彦、蒔生、節子は、久々の再会の後、屋久島へ旅に出る。太古の森で蘇らせる過去の記憶。「美しき謎」をテーマに語り合う4人は、どこへ辿り着こうとしているのか。

静寂が支配する神秘的な空間。目を覆う圧倒的な緑と森の匂い。屋久島という太古の森は非日常的であり、「美しき謎」を語る舞台にとても合っていると思う。
自然が持つ雄大さ、大きな懐に包まれている安心感。前に進むにつれ疲労は増すけれど、心だけは研ぎ澄まされ、全身を耳にして吸収しようとする。社会で見せていた顔は、学生時代の顔へと変わり、忘れていた感覚が目覚めていく高揚感。

謎は気になるけれど、よくあるミステリー小説のように早く結末が知りたくて先を急ぐのではなく、一つ一つのゆっくりとした流れを楽しめる小説です。記憶とは決して正しいものではなく、別の形に塗り替えられられてしまうこともある。大事なことなのに受け入れがたい記憶は抜け落ちていることもある。ある一定の時間を共有した4人。十数年ぶりに出逢うことにより、過去を分かち合える彼らが羨ましいと思った。

同級生。懐かしくもあり、ほろ苦くもあり、こそばゆくもある。幼かった自分を知っている存在だから。「大人の顔」は脱ぎ捨て、安心して飛び込める心のふるさと。
爽やかな中に時折浮かび上がる危うさにドキリとする。この中で一番謎めいている「蒔生」の章が楽しみである。

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[ミステリー・サスペンス]
→テーマ別[異国情緒]


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黒と茶の幻想 (下)/恩田陸 著


美しい謎を追わずにはいられない彼ら。とりとめもない会話の矛先から徐々に真相へと近づいていく。私の中で一番の謎であった「蒔生」がやっと理解できたのだけど、共感はできない。内側からみた「自分」と、外側の他人からみられている「顔」は異なる。そして他人からみたら明白なことが、本人にはみえていないことがある。

忙しい彼らは、いつも時間に追われている。多くの場合、謎は謎のまま曖昧にして日々は過ぎていく。数日間を森で過ごす彼らに時間はたっぷりある。「もうあの頃には戻れない」ことを知っていて、しっかりと「大人として生きる場所」があるにも関らず、どこか一点だけ「過去に置き忘れている」彼らは危うい。

節子は、利枝子のことをこんな風に回想する。「…蒔生の表層的な部分しか見ていない…彼女が望む部分しか見ないようにしていることに気付かないふりをしている…」
身につまされる言葉である。私が誰かを好きになる時も、こんな風に自分に欠けている部分を補ってくれるような、不安定な部分を埋めてくれるような人を欲していたから。

一番現実的で世の中を器用にスイスイ泳いできたかのようにみえる節子にも暗い幼少時代があり、上手く折り合いをつけて「今」に至ったんだなぁと思うと感慨深い。自分の役割分担を自覚し、意識的ではあるけれど上手く演じることができる彼女が潔くてカッコいい。

普段見えていなかった自分と対峙し、誰かと本気でぶつかり合い、旅を終えた時、誰もが自分自身を振り返らずにはいられないと思う。

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[ミステリー・サスペンス]
→テーマ別[異国情緒]


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