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フィリパ・ピアス作品

真夜中のパーティー トムは真夜中の庭で

真夜中のパーティー/フィリパ・ピアス 著


謎めいたお隣さん。宝物の秘密の貝。子どもの日常生活におきる、小さいけれど忘れがた い不思議なできごとの数々。夢と現実の世界を行き来する印象的な8つの短編をおさめる。 (裏表紙より)

8つの短編のうち好きなのは表題作である『真夜中のパーティー』です。
『真夜中のパーティー』は、4姉弟が真夜中にこっそり小さな宴を行うお話。初めにお腹 を空かしたチャーリーがキッチンへ行くと、そこには姉マーガレットが犬と一緒にいたの でした。二人がココアやチーズサンドイッチで空腹を満たしていると、物音に気づきアリ ソンもやってくる。ボールに入ってるマッシュポテトをみつけたアリソンは、ある考えが 浮かび末弟のウィルソンも連れてくる。

真夜中のこの宴は子供たちにとって、ささやかだけど忘れがたい想い出になるのではない でしょうか。大人たちは知らない子供たちだけの秘密、しかもそれが真夜中に行われてい るなんてワクワクするではありませんか。

大人にはわからないけれど子供にとっては、ずっと心に残る小さなドラマがあります。映 画のワンシーンのようにその時の心情、行動が記憶されていて、いくつもの出来事が引出 しに仕舞われている。想い出は想い出のままにいつでも取り出せるけれど、大人になった 今もう同じように感じることはできないことが残念に思います。

私にも人からみると何てことない事だけど、自分の中では大きな意味のある出来事 がいくつかあります。日常の景色や人が今までみていたものと違うものにみえるぐらいに。 周りは何も変わらないのに、自分の心の地点が大きく揺れ動いたとき生を実感できます。
この本は忘れていた心に眠る宝物の数々を呼び覚ましてくれます。いつのまにか主人公に 引き込まれ、幼かった自分に出会えることでしょう。

→著者別[海外小説]
→ジャンル別[児童文学・絵本]
→テーマ別[子供の情景]


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トムは真夜中の庭で/フィリパ・ピアス 著


トムは、弟のピーターがはしかにかかったために、夏休みの間おじさんとおばさんの住む アパートに預けられることになりました。庭もなく、遊び相手もいない退屈な毎日。そん な時、真夜中に古時計が13時を打つのを聞き、階下に降りていきます。扉を開けると昼間 はなかったはずの庭園が広がっていたのでした。ヴィクトリア時代の少女ハティと友達に なり、真夜中になると何度も庭園を訪れ楽しい時間を過ごしていたのですが・・・・・・

扉を開けると、時を越えた違う時代に辿り着けるとは、なんて素敵なんでしょう。それも 真夜中に古時計が13時を打つ時にだけ、なかったはずの世界が現れるなんて。広い芝 生に花壇、大きな温室、いつくものまがりくねった小路が続いているのですから、飽きる ことはありません。ここには子供の時に思い描いた、あったらいいなという夢がいっぱい 詰まっているのです。

トムの世界とハティのいる世界は時間枠が異なるようです。たった一晩しかたっていない のに、ハティは随分と月日が流れ、大人になっていくのです。しかも、トムがだんだん薄 れていってしまうのだ。
大人の女性へ=トムがもう庭園の遊び友達という存在ではなくなっている。
それが薄れていっているということなのかなと思うと寂しいですね。

そしてトムの気持ちになってみると――
ずっとこのままでいたい=庭園で冒険していたい=大人になりたくない
でも、ハティとの年齢差は広がり、子供のまま取り残されている切なさも感じたのでした。

最後に二人が出会うところは本当に感動的です。児童文学ですが、大人でも楽しめると思 います。オススメ。

→著者別[海外小説]
→ジャンル別[児童文学・絵本]
→テーマ別[美しい風景描写][タイムトラベル]


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