芝桜(上)〜(下) | |
花柳界を舞台に、二人の芸者の人生模様を三十年もの歳月の中に描いた作品です。
雛妓の頃から一緒だった正子と嶌代。実直で勝気、男に身を委ね贅沢な暮らしをさせても
らいながらも、そこに溺れることなく幸せな結婚を夢見る正子。金のためなら相手を選ば
ず次々に男をかえ、世話を焼くフリをしながら相手をいいくるめ思いのままにしてしまう
嶌代。対照的な二人の絡み合いが見事で、鮮やかに描かれています。
信心深く親孝行な一面もありながら、まったく正反対の性質を合わせ持つ嶌代。親切を装
いながら近づき、欲しいものをなんでも意のままにしてしまうその姿は空恐ろしくもあり、
不気味でもあります。
こんな嶌代に真っ向から立ち向かっていっても太刀打ちできるような相手ではない。正子
が何をいってもすっとぼける嶌代と、業を煮やす正子の様子が、くっきりと浮かび上がっ
てくる。
嶌代がしゃあしゃあと何かを語る姿にはただ圧倒され、正子がどう返すのか、次に嶌代が
どうでるのかハラハラしてしまう。
女同士の葛藤に花柳界のしきたり、男女の駆け引き――非日常の空間をたっぷりと堪能で
きた。
→著者別[国内小説]
→ジャンル別[一般小説]
→テーマ別[壮大なスケール]/
[遊女・芸者]