オデット | |
無垢な少女オデッドは、灰色の古城で大人たちに守られ裕福に暮らしていた。はるか彼方
には、芳しいリンデンの樹が立ち並び、うねうねと流れるロワール川に、エメラルド色の
葡萄畑。煌めくその世界は、ため息がでるほど美しく夢の中にいるみたい。
文字を包み込むように添えられた挿絵は情感たっぷり、物語をより引き立たせ、おとぎの
国へと導いてくれます。
先祖たちの肖像画、庭園に咲く薔薇の花々、小鳥たちがささやき合うのに耳を傾ける毎日。 オデッドが幾度も思い描く空想や物語の数々。城の外の世界はとても遠く遥か彼方に感じ られた。汚れたものや、醜いものとは大よそかけ離れた所にいる、純粋で清らかな少女な のでした。
暮れなずむ夏の夜、オデットは、聖母マリア様を探しに古城を抜け出す。聖母様に捧げる
薔薇の花束を摘む少女は窺う事を知らない。
そこで出会うある女。聖母様に会えるとばかりに期待に胸を膨らませていたオデッドにと
って、この夜は、忘れられない一夜となるのです。
大人の世界を垣間見てしまった時の打ち砕かれるような衝撃。そこには今までの無垢な少
女はもういない。大人への階段を登り始めてしまった別の少女がいるのです。
道端に散る萎れかけた薔薇が哀しく映る。
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