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志川節子作品

手のひら、ひらひら―江戸吉原七色彩

手のひら、ひらひら―江戸吉原七色彩/志川節子 著


吉原を舞台にした連作短編集です。遊女よりも、むしろそれをとりまく人々が数多く登場 します。閨房の秘技を躾け、妓を遊女に仕立て上げる上ゲ屋、年季を重ねてなまってきた 妓の錆をとり、心身の張りを保つ術を仕込む保チ屋、妓の心を見張り、間夫の芽を絶つ目 付など、裏稼業の男衆が出てくるのが興味深い。

上ゲ屋、保チ屋、目付などは架空の職業なのですが、本当に見てきたみたいな実感のこも った描写が随所にみられ、ドキリとする。手ほどきを受け、遊女がどのように変わってい くのかとか、場数を踏むうち掴んだコツや真の悦びについて。極みに到達した本物の職人 の話を聞いているかのようです。

ドロドロしすぎず、適度に湿り気のある文体で読みやすい。そこに生きる人々にも家族が あり、慕ったり、慕われたりの情感、温かみなども伝わってきます。
どんなに不幸な境遇だったとしても、悲しみを背負いつつ前に進もう、笑っていようとす る凛とした佇まいが清々しい。

7つの短編が少しずつリンクしていて、最後で謎が解け、繋がる。華やかにみえる吉原に も、裏で支える人達がいて、たくさんの想いで成り立っている。一つ一つのエピソード は短いものだけど、どれも印象に残るものばかりです。様々な人生模様と風情を感じるこ とができる素敵な一冊。

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[歴史・時代小説]
→テーマ別[遊女・芸者]


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