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小森香折作品

ニコルの塔

ニコルの塔/小森香折 著


寄宿舎と授業塔を往復する、単調だけど静かな生活。だがニコルは気づいてしまった。 「ここは何かがおかしい、わたしはニコルではない…」“地球のマント”に隠された、修 道院学校の忌まわしい秘密とは?そしてニコルは、そこから無事に脱出し、記憶をとりも どせるのか?不思議な猫に助けられ、謎の絵に導かれる、ミステリアス・ファンタジー。 第5回・ちゅうでん児童文学賞大賞受賞。(「BOOK」データベースより)

寄宿舎から塔への道のりはミルク色の霧に包まれ、自転車で向かうニコル達の頭上にはカ ラスが飛び交う。こんな舞台設定がもう、夢の中をフワフワと浮かんでいるみたいで、幻 想的です。

礼拝堂に、祈祷書、お茶の時間にグレイの僧服に身を包んだ修道女。祈祷書の聖句にはこ んな言葉が掲げられている。
「すべてを受けいれよ。疑問をいだくのをやめよ。考えるよりしたがうことが、わたした ちのつとめ」

だんだん記憶が薄れ、何も考えなくなってしまう生徒たち。まるで鳥籠にいる鳥のようで す。誰かに指示を与えられないと動けなくなってしまう。自分という個性が消え、たくさ んいるロボットの中の一体のようになってしまう。空を飛べるはずの鳥も、ずっと籠に閉 じこもっていたらいつか飛べなくなってしまう。そんな未来が想像できてしまうこの本は、 私たちに深いメッセージを伝えているように思うのです。

次々に記憶が消されていく友人たちと、何か隠している大人たち。不思議な猫や、突然現 れる男の子の謎。ニコルの心もとない気持ちがこちらにまで伝わってきて、思わず息をひ そめてしまう私がいる。
ひっそりとした静けさや、鮮やかな色彩が胸に残る、雰囲気たっぷりのお話です。

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[児童文学・絵本]
→テーマ別[夏休み]


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