リンさんの小さな子 | 子どもたちのいない世界 |
戦争で家族も家も失い、生まれたばかりの孫娘とカバン一つ持ち、難民として異国の町に 着いた老人リンさん。知り合いもいない、言葉も通じない、故国を懐かしく想う日々。 そんな中、出会ったのは、妻を亡くしたばかりの男バルクだった。
言葉の通じない2人。なのに、こんなにも通じ合いお互いを必要としている。声の響き、
感触、そこから何かを感じ取ろうとするリンさん。言葉にはならない言語以上の何かを掴
み取っていたのですよね。確かなことはわからないけど、お互いの抱える傷、歩み寄ろう
とする気持ちは、なんとなく伝わるのだと思う。
喜びを伝えたい時、相手を励ましたい時の一生懸命な表情、身振り、手振り、一途な想い。
そこには言葉以上のものがあるのではないだろうか。
リンさんが故国を想う時、次から次へと溢れてくるその情景は、美しくどこまでも広がる。 と同時に、その回想が途切れた時、リンさんの悲しみ、孤独感が静かに伝わってくる。
読後、リンさんの抱える深い闇を想い、その中に灯る光を感じた。闇の中にいるからこそ、 光が確実に感じられる。みつけられる。そんなことを思った。
子どもであるあなたのために、そしてかつて子どもだった大人のあなたに贈る20の物語で す。どのお話も奇妙でおかしなものばかりなのだけど、不思議と優しい気持ちになってし まう。ぶきような妖精、悩み掃除人、ワクチンを発明する女の子など、頼もしく愉快な人 物たちが登場します。
愛情を一身に受け、すくすくと育つ子もいれば、疎まれ邪魔者扱いされる子もいる。夢み
る子どもに冷めた子ども、優しすぎる子どもなど色んな子がいる。
行間にたっぷり詰まった悲しみや寂しさ、喜び。ふと立ち止まり、この世界について想い
をめぐらす自分がいる。
白くなりたかったロバや、本の中に入ってしまう少年、ジャボン玉の中で暮らす少女とか
寓話めいたものが多いのだけど、伝えたいことはもっと大きくて広い世界のこと、哲学的
なことへと結びついているのだ。
冷やりとしたり、ほのぼのしたり、暖かくなったり、色んな気分を味わえる一冊。