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宮木あや子作品

花宵道中 白蝶花(はくちょうばな)
春狂い

花宵道中/宮木あや子 著


江戸の吉原を舞台に遊女たちの悲恋を綴った物語です。5編からなる連作短編になってい て、最初脇役だった人が主役になったりして、人物のつながりや生い立ちがみえてくる。 遊郭のしきたりや、暮らしぶり、女同士の友情、男女の交わりなど細やかに描かれてい ます。

表題作である『花宵道中』は、遊女の朝霧が偶然出逢った半次郎との悲恋の物語。
初めて誰かに恋をし、どうしようもなく愛してしまった。その後朝霧のとった行動。もう そうするしかないと思った、それに踏み切ってしまった朝霧の心情を思うとぐっと胸が詰 まる。
そして『青花牡丹』では、朝霧の側からしかわかりえなかった半次郎の想いの深さを知る ことになる。半次郎にもまた壮絶な過去があり、朝霧との出逢いからささやかな幸せを夢 見るのだけど・・・・・・

一番好きなのは『十六夜時雨』
惚れる弱さは心の内にしまい込み、とっくに諦めたつもりだった。叶うはずのない恋なの だから。ひとたびこの胸の中に飛び込んだなら、抑えていた想いはもう止められない。
グラグラ揺れる心、それでも凛とした気持ちを保とうとする八津。最後に選んだ彼女の選 択がいじらしく強さが感じられます。

色香漂う官能シーンは数あれど、いやらしさは感じない。大胆な性描写の裏に隠れた彼女 たちの気持ちが伝わってくるから。
言葉にならない悲痛な叫びや切なさがじわじわと染み入るようです。

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[歴史・時代小説]
→テーマ別[エロティック][遊女・芸者]


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白蝶花(はくちょうばな)/宮木あや子 著


戦前、戦中、戦後、現代と4つの章からなり、前作で登場した人物が脇役になっていたり と、どこかで繋がっている。激動の時代、好いてもいない相手と一緒になり生涯を共に しなければならない運命、生き抜くために遠い地へ逃げ新境地を開いた女、愛する人の 子を生むために、一人旅立つ少女・・・・・・運命に翻弄されながらも、愛に身を浸し、愛に 生きた女性たちの物語です。

戦争に愛する人を奪われ、残された女たち。ただ待つことしかできない。死ぬかもしれ ないのに、送り出さなければならない哀しみとはどれほどのものか。身を切られるよう な、胸がキリキリ痛むような思いなのではないでしょうか。

第3話の『乙女椿』が一番好きで、その中でも忘れられないセリフがあります。
「明日死ぬがも判らね男の、子を身籠て何が悪い!?結婚してねば子産んでいけねえっ て一体誰が決めたな!?生きて帰ってこらっだら一緒なろうって約束した人なんだ、そ の人の子供を先さ産んで帰り待つのがなして悪いな!?」

これは、18歳の千恵子が、父親におろしてこいと言われた時に言ったセリフです。
このセリフから、千恵子の愛する人への想い、凛とした強さが切々と伝わってきます。こ の後、家を飛び出すことになるのですが、自分の決めた道を迷うことなく一歩ずつ進んで いく姿に胸打たれます。

今回もいくつかの官能シーンがあるのですが、やっぱり美しい。魅入ってしまう。
身体だけでなく、心までも全てを捧げひとつになる瞬間。でも先を急がず艶のある文体で、 ゆっくりと楽しませてくれる。まず最初に気持ちがなびかないと身体は熱望しない。抑え ていた気持ちが抗えず一気に溢れ出す時、いつのまにか身体も委ねてしまっているのだ。 女性の視点で書かれた官能美も魅力のひとつです。

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[一般小説]
→テーマ別[壮大なスケール][エロティック]


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春狂い/宮木あや子 著


生まれながらにして、人を狂わすほどの美しさを内包していた一人の少女。男たちの欲望 に曝され、身体を穢された美少女が、桜咲く園で望んだ未来とは―。窓の外で桜の花びら が突風に巻き上げられている。放課後の教室、私は教師の前でスカートをたくしあげる。 「私をあと二年、守ってください」。制服の下に隠された、傷だらけの少女の秘密。 (「BOOK」データベースより)

春は、もっともパワーに溢れた時期だと思う。ずっと巣に篭っていた長い冬が終わり、羽 を伸ばし飛び出したくなる、それが春だと思う。ただ高まるエネルギーが良い方に転べば よいのだけど、マイナスへと向かったエネルギーは時に狂気となる。

ここには、狂った人がたくさん登場する。少女に惹かれ近づくのだけど、純粋な愛情とは 違う。一方的で身勝手な愛情、剥き出しの欲望をぶつけてくるのだ。目を覆いたくなるほ どおぞましい光景に胸が掻き毟られる。

身体を穢され、心を傷つけられた少女にとって、男はすべて敵だった。少女の思考に沿っ て進んでいくと、もはや絶望しかみえない。もがいてももがいても、浮き上がらない暗い 湖の底にいるかのようです。

どんなに手を差し伸べても届かない少女の闇とはどのようなものか。細胞も、皮膚も徐々 に蝕まれ、手足は鉛のように重く・・・・・・いつしか身体も空気に溶け出し、魂だけの存在になっ たかのよう。壮絶で悲痛なお話なのだけど、圧倒的な筆力でぐいぐい惹き込まれてしまう。

大人になるまでの時間は、少女にとってあまりにも長すぎた。学校は牢獄のように感じら れ、家では父親にまで襲われそうになり、どこにも居場所がなかった。
私はこんな少女に「負けるな」とか「頑張れ」なんてとても言えない。彼女の見てきた大 人たちがあまりにも醜いから。どれほど失望し憎んできたことか、彼女の気持ちは計り知 れない。

彼女こそ、狂ってもよかったと思う。叫んでもよかったと思う。それをみた大人が嫌悪す るではなく、たった一人でも手を差し伸べることを私は信じたい。
この世界は、正常を装いつつ、内面は今にも崩れそうに悲鳴を上げている人が大勢いる。 みんな何かを背負いながら生きていて、絶望を繰り返しそれでも生きている。脆く弱い存 在だけど、最後まで生き抜いた時、その人は強い人と言えるのではないでしょうか。

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[一般小説]


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