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ザビーネ・キューグラー作品

ジャングルの子―幻のファユ族と育った日々

ジャングルの子―幻のファユ族と育った日々/ザビーネ・キューグラー 著


ジャングルの奥地に石器時代以来変わらない生活を送るファユ族という民族がいた。言語 学者であり宣教師であるキューグラー夫妻は、ファユ族の研究のため、ジャングルへ移住 します。夫妻に連れられ、5歳になる次女、ザビーネは、ファユ族の子供たちに混じって遊び まわり、幸せな少女時代を過ごす。しかし17歳になり、スイスの寄宿学校に入ると、文化 の違いに馴染めず苦しむことになる。二つの世界、二つの文化に揺れながら自分の居場所 を見出していくまでの再生の物語なのである。

この民族が発見されたのが1978年。色黒で髪は縮れ毛、裸で手には弓矢と石おのを持った 奇妙な姿だ。たくさんの写真の数々と暮らしの描写はとても興味深い。
まず目でみるよりもすばやく危険を察知する能力、植物や動物のどれが食べられて、どれ が毒を持っているということ、近隣部族との戦争もある。そして珍しいのが音調言語と呼 ばれるファユ族の言葉なのである。同じ言葉でも抑揚や音の高さで、違う意味になってし まうというのだから覚えるのはとても大変そう。

著者であるザビーネは、生き物が大好きでクモやコガネムシ、カエルなどたくさんの生き 物を飼っているのだけど、コレクションはいくらあっても止まることを知らない。
ワニやオウムまで飼おうとして、そのたびママを驚愕させ目に涙をためているところなど 微笑ましく思いました。

大洪水が起きた時に、家の中のそこらじゅうにあらゆる虫が這い上がってきた時のこと、 家族みんながマラリアに感染した時のこと、イノシシの群れが押し寄せてきた時のこと、 ジャングルでの生活は危険がいっぱいだ。それでも、生きる術をみにつけ、順応できる 著者が頼もしく感じられた。

西洋世界に戻ったザビーネは、馴染めずかなりの長い年月苦しむことになる。
ジャングルでの生活は肉体的には辛いけれど、精神的には楽だったというザビーネ。反対 に西洋世界のほうは、なんの前触れもなしに精神的なマラソンを走らされるはめになった という一文が印象的でした。

このパニックはなんだろう、身体はこちらにあるのに、私の心はどこを彷徨っているんだ ろう――強いカルチャーショックを抱え、戸惑うザビーネの心の叫びが聴こえてくるよう です。
まるで心はまだ準備ができていないのに、外側だけがどんどん進んでいっているような・・・ ・・・
突然に早い流れに飲み込まれ、尻込みしているような・・・・・・
私たち現代人は、この流れに合わせ身を委ねているわけだけど、心(アィデンティティー) は、別のところにある。幸せはどこにいても、自分の内から見出せるということを著者は 教えてくれています。

→著者別[ノンフィクション]
→ジャンル別[エッセイ・ノンフィクション]
→テーマ別[モチーフ]


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