潜水服は蝶の夢を見る | |
編集長として活躍していた彼は、ある日突然脳出血で倒れる。二十日間もの間、 生死をさまよい、こちらの世界に戻ってきた時には、全身が麻痺して動かなくなっ ていた。唯一、動かせるのは、左目のまぶただけ。この本は、瞬きを繰り返すことだ けで完成させた彼の闘病記です。
タイトルに出てくる潜水服というのは、彼の身体的な不自由の象徴を表したもの。 蝶というのは、身動きできない潜水服の中から、心は蝶のようにヒラヒラと自由に 飛び回れる、ということを言い表しています。
身体が動かなくなり、しゃべることもできない、今まで出来てたことが出来なくなる
とは、どんなにもどかしく、絶望的なことでしょう。
きっと涙なしには読めない、孤独や哀しみに溢れた内容なのかと思っていたら、想
像とはちょっと違いました。
この本からは、勇気や力強さが伝わってきます。逆にこちらのほうが、生きるため
のエールをもらったような、励まされたような気がするのです。
動けなくても、彼の意識は元気だった時と変わらず、好奇心旺盛で明るく、魅力的
な人柄が伝わってきます。
過去の記憶や、家族のこと、病院の中のことまで、彼の思考は実に軽やかに、あ
ちらこちらを飛び回っていく。
いとおしみながら向けられる身近な日常。最期まで生き抜いたその姿に、大きく胸
が揺さぶられたのです。
→著者別[ノンフィクション]
→ジャンル別[エッセイ・ノンフィクション]