図書館への道―ビルマ難民キャンプでの1095日 | |
この本は、シャンテ国際ボランティア会(SVA)の派遣により、ビルマ難民キャンプの図書 館活動に携わることになった著者の記録です。主な活動内容は、子供たちに母語で読める 絵本を届けること、図書館員の育成などです。
図書館を作るということ、それも電気のないところで、建設の図案を考えることから始め なければならない。ビルマ難民であるカレン族は少数民族であるため、母語であるカレン 語の本を集めることは容易なことではありません。そのため、すでに出版されている日本 語や英語で書かれた絵本に、翻訳した文章を貼り付けていくという地道な作業をしていく ことになります。
図書館が出来上がっていく工程は、とても長い道のりです。電気の供給が少ないため、訳 文をタイプで打ち込んでいると停電したり、紙芝居の読み方を練習したり、著者もスタッ フもみな真剣です。
開館当日、子供たちが一斉に駆け込んでいく場面は感動的です。賑やかな図書館、子供た ちの楽しそうな笑顔。本にあまり触れたことのなかった子供たちにとっては、本は珍しい 存在なのですよね。たくさんの本を読んで、知識をいっぱい身につけて、豊かな人間にな って欲しい、心からそう思いました。
いくつかショッキングな出来事があります。一つは図書館が洪水で跡形もなく流されてし
まったこと。(後に再建されました)
もう一つは、図書館にある本が盗まれたこと。英語の辞書を、夜中に建物を壊して盗んで
いったのだ。そして知らなかった事実――難民キャンプでは教科書も辞書も一人一冊など
ないということ。
建物を破損させてまで欲しかった辞書。そこまでして語学の勉強をしたかった気持ちを思
うと、私は言葉をなくしてしまいました。
この本には難民キャンプで暮らす人々の現状も描かれています。いくら勉強をしてもそれを 活かせる場がないこと。ビルマ難民の帰還の目処がたってないこと。私たちが知らない遠 い異国の生活に触れることができます。
→著者別[ノンフィクション]
→ジャンル別[エッセイ・ノンフィクション]
→テーマ別[図書館が舞台/本の本]