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内田樹作品

街場の文体論

街場の文体論/内田樹 著


言語にとって愛とは何か?30年におよぶ教師生活の最後の半年、著者が「これだけは伝えたい」と教壇で語られた「クリエイティブ・ライティング」14講。全国民に捧げる、「届く言葉」の届け方。 (「BOOK」データベースより)

「情理を尽くして語る」
著者が一番に伝えたかったことは、まさにこの一語に尽きると思う。言ってることは一貫して同じなのだけど、様々な角度からたくさんの言語を駆使してユニークに、そして時には熱く身近な体験なども交えながらわかりやすく教えてくれる。

「言語における創造性は読み手に対する懇請の強度の関数です」
とても印象的な言葉です。文章を書くとき、わかりやすい言葉でスラスラ読みやすい文体を心がけてきたつもりでしたが、そこから一歩踏み出して、読み手のほうに歩み寄る姿勢、つまり「愛」が必要なのだと思いました。

文法・音韻が日本人の行動・思考にどう影響しているか
アルファベッドだと15文字くらいの綴りの字が出てきた場合、凝視しないと単語が特定できないが、漢字は表意文字のため、意味を取る手間は劇的に軽減されると言っている。
漢字・ひらがな・カタカナと覚えることは多いが、ひとたび覚えてしまえば、アルファベッドよりも、より早く理解が進む。私は、漢字は今まで記号のように捉えていたのだけど、著者のいうように漢字は「絵」であり、「漢字」からイメージを膨らませながら読んでいたことに改めて気づかされた。

「届く言葉と届かない言葉」
どれほど非論理的であっても、聞き取りにくくても、知らない言葉がたくさん出てきても、「届く言葉」は届く。どの言葉も語義明瞭で、文法的にも正しく綴られていて、美しい韻律に載せて語られても、「届かない言葉」は届かない。(中略)「届く言葉」には発信者の「届かせたい」という切迫がある。(中略)その必死さが言葉を駆動する。思いがけない射程まで言葉を届かせる。(P285)

本書でも、著者の「わかって欲しい」という強い思いが胸に響きます。大勢の生徒に向けられた講義なのに、目の前にいて、まるで自分一人に向けて語ってくれているような臨場感があります。

書いてあることは、どれも有意義であり、大事なことがギュっと濃縮されている。だからこぼれ落ちないようにしっかりと染み込ませるように読んでいったのだけど、私の中で消化し、本当の意味で理解していくにはまだまだ時間がかかりそうです。それでも、知的好奇心が満たされる意義のある読書となった。「文章の奥義」について知りたい人にはぜひ読んで欲しいです。

→著者別[ノンフィクション]
→ジャンル別[エッセイ・ノンフィクション]


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