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田丸公美子作品

目からハム イタリア語通訳狂想曲

目からハム/田丸公美子 著


イタリア語通訳歴38年の著者が書いた、通訳の裏話や失敗談、イタリア人気質、言葉つい てのエッセイ集です。タイトルである「目からハム」は、日本でいうと、「目からうろこが落ちる」 という意味になります。

身振り手振りも大きく個性豊か。ユニークでおしゃべり好きなイタリアの人達。そんな 人達との笑いあり、涙あり、ときにはしんみりしたり、猛烈に腹が立ったりの出会いの数 々。イタリアの人達をみているとつくづく自分に正直なんだなぁと思う。自己中心的とも いえるけれど、気まぐれでもあるけれど、それでいいではないですか。その場その場で気 の趣くままに心に忠実に。その姿は実に爽快で頼もしく思えます。

イタリア語は、心のひだを表現するための言葉が何段階にも豊富に揃っているそうです。 喜怒哀楽をリアルタイムに素直に表現していく。これって、とても気持ちのいいことで すよね。せっかく今楽しんでいるのならその気持ちを表現しないと。怒りが湧き起こっ たのなら、その場で発散させていく。

日本人は、その場を丸く収めようとし、波風立てず当たり障りのない会話でやり過ごすため、 なかなか深い関係を築けない。
怒りの感情はいったいいつから溜め込んできたのか。感情のバロメーターは、なんの前触 れもなく一気に上昇し、絶縁状態へと発展することもある。普段本音を言わないのに、こ ういう時には、自分の感情をコントロールできないのだ。
イタリアの人をみていると、違いの多さから日本人の気質が垣間見え、私達は不器用な人 種なのだなぁと思った。

読み終わりつくづく感心したのは、著者である田丸さんの語彙の豊富さ。その場にあった 適切な言葉や、同じ意味でも違う言葉に置き換えてみたりするセンスのよさ。リズムの良 い読みやすい文体からはイメージが膨らみ、言葉の持つ魅力を感じました。

私もこうして文章を書いているわけだけど、いつも伝えたいことを上手く表現しきれずも やもやすることが多くあります。心に抱いたイメージ、その場の雰囲気は確かに残ってい るのだけど、言葉に置き換えることによって、違うものに変わってしまう。この感覚をそ のまま再現できたらいいのに。ぴったりくる表現がみつかればいいのに。やるせなさが残 ります。
田丸さんは、きっとたくさんの語彙が脳に蓄積されていて、必要な時にいつでも瞬時に取 り出せるのだろうなぁ。

翻訳とは違い、通訳ってリアムタイムに行われる。辞書など引いてもいられないし、瞬時 に最適な言葉を紡ぎ出さなければならない。よくテレビをみていて、スラスラ言葉が出て きてカッコいいなと思ってたけれど、通訳ブースの裏ではこんな修羅場が繰り広げられて いたのですね。「持続的瞬発力」が必要だそうで、疲労の極致だというのもうなずけます。

→著者別[ノンフィクション]
→ジャンル別[エッセイ・ノンフィクション]
→テーマ別[通訳家/翻訳家]


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イタリア語通訳狂想曲/田丸公美子 著


私は覚えている。冷や汗を流したいくつもの修羅場を、犯してしまった数々の誤訳を、そ して、そんな私を温かく見守ってくれたイタリアの人々を…イタリア語通訳のドン・シモ ネッタが綴る、通訳人生40年の艶笑喜劇。(「BOOK」データベースより)

会議や講演会での通訳は、専門性の高い分野になるほど事前に下調べが欠かせない。
「素粒子物理学」「ニュートリノの質量発見」「塩基解読」「陰極線の発見」などなど、 難しい単語がいっぱい。私は日本語でも意味がわからないものばかりなのに、こんなもの を訳していくなんて大変だなぁと思う。

同時通訳は長く持続させるのは難しいため、パートナーと交代しつつ行われる。それでも いつまでも話し続ける人、早口でしゃべる人など困った人もいる。

通訳中の脳内は、短距離全力疾走に等しい働きをしていて、脳がオーバーヒートを起こす こともあるそうです。耳に聞こえるイタリア語が雑音と化し、しまいには日本語の意味す ら理解できなくなる状態がその日いっぱい続く。すごい激務だ。一気にフル回転し消耗し た後の疲れがジワーっと伝わり、熱がこもった脳、頭から出てくる湯気がみえてきそうで す。

マザコン男性に、機能性よりもデザインを重視するファッション性、一目置かれる熟女の 魅力などイタリアの国民性もよくわかります。意外だったのか、イタリア人が日本でよく 買うおみやげが、セラミック包丁だということ。他にもピンチがいっぱい付いた四角型の 物干し、食品用ラップ、皿洗いスポンジ、猫缶など贈ると喜ばれるそうです。なぜこんな ものが欲しいんでしょうね。不思議です。

通訳の裏話とイタリア人がほんのちょっとわかる愉快なエッセイ、オススメです。

→著者別[ノンフィクション]
→ジャンル別[エッセイ・ノンフィクション]
→テーマ別[通訳家/翻訳家]


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