『翻訳文学ブックカフェ』 新元良一(編) |
『翻訳文学ブックカフェ2』 新元良一(編) |
『最高齢プロフェッショナルの教え』 徳間書店取材班(著) |
『君に伝えたい本屋さんの思い出』日販マーケティング本部(編) |
『新入社員に贈る言葉』日本経団連出版(編) |
この本は、新元良一さんが、名翻訳家11人(若島正、柴田元幸、岸本佐知子、鴻巣友季子、 青山南、上岡伸雄、小川高義、中川五郎、越川芳明、土屋政雄、村上春樹)へインタビュ ーした対談集です。翻訳家になった経緯から始まり、仕事の仕方や今後訳してみたい作品、 海外文学に関してなど内容は盛りだくさん。
翻訳は原文に忠実に訳そうとすると、本来の持つ雰囲気や質感が異なってしまうことがあ ります。原文に当てはまる日本語がない場合、似たような表現を探したり、特には削った り、補ったり、つくづく大変だなぁと思う。読解力や語学力だけではなく、創作するセン スも必要とされる実に頭を使う作業なのである。
作品の世界が掴めるまでの行程を、ある人はマラソンに例え、ある人は絵画に例えたりし ていて、どんな状況なのかこちらも想像しやすい、と同時に訳者の方の言葉の引き出しの 多さや、発想力の豊かさなども窺えて、すごいなぁと思った。
海外文学の話では、また訳してみたい作家や、もうやりたくない作家、訳すのが難しかっ
た作品や、似たような作風の作家を比べて違いを語り合ったり、翻訳文学が好きな私にと
ってはどれも興味深い話ばかりです。
長い年月、言語に精通してきたからこそ語れる内容はどれも濃く、新鮮に感じられます。
普通の人はここまで深く掘り下げては考えない。こういう見方もあるのかと勉強になり
ました。
対談中に出てきた本や著者のプロフィールは、欄外に掲載されています。その中で読んだ ことのある本が出てくるとやっぱりうれしい。翻訳が出来上がるまでにこんなエピソード があり、こんな苦労があったのかと思うと、その作品がますます愛おしくなってしまいま す。
→著者別[ノンフィクション]
→ジャンル別[エッセイ・ノンフィクション]
→テーマ別[通訳家/翻訳家]
前作に続くシリーズ2作目の登場です。今回は、名翻訳家12人(高見浩、岸本佐知子、沼 野充義、黒原敏行、佐々田雅子、高橋源一郎、柴田元幸、渡辺佐智江、栩木伸明、岩本正 恵、小山太一、堀江敏幸)へのインタビューです。
一番面白かったのが、渡辺佐智江さんとの対談。
新元さんの「翻訳作業でやってて楽しいとか辛いとかありましたか」という質問に
「楽しくなんかありません、どんな本やってても」
「早く終わりたいという一念しかありません」
楽しい本もあれば、苦しく難解な作品もあると思うのだけど、この方はどんな本も楽しく ないといっている。結構冷めているんだなぁと思っていたのだけど、ある日出逢った一冊 の本の話で印象がガラリと変わった。作家本人にトイレでその本を訳しますと言って電話 番号や住所を聞き出したというのだからびっくり。その後も続く熱い話に、私はグラグラ っときてしまったのでした。
岸本佐知子さんとの対談で印象に残った言葉
「会社のような、縛りのきつい環境で発せられる言葉こそが、本当に生きた言葉だと思う
んですよ。それに、その言葉には必ず表情や匂いや空気がくっついてきますよね。それは
ものすごく貴重なデータベースなんです」
ハッとする一文である。特に言葉についてくる表情や匂いや空気というところ。
人と人がこすれ合い、ぶつかりあってこそ生じるリアルな感情。それは現実に根ざした生
々しいものである。ゆるい環境やあつれきのない場所では生れない。生きた言葉――まさ
にその通りだと思う。
堀江敏幸さんとの対談では、創作について、翻訳についてのスタンスなどを、余すところ なく語っています。仕事への取組み方がしっかりと確立されていて、何を聞かれても独特 の自論を持っていらっしゃる。人間的魅力を感じると共に、この方の小説も一度読んでみ たいと思った。
→著者別[ノンフィクション]
→ジャンル別[エッセイ・ノンフィクション]
→テーマ別[通訳家/翻訳家]
やりたい仕事がみつからない、仕事がつまらない、頑張っているのに成果が出ない…こんな悩みを抱える人にぜひ読んでもらいたい。91歳「漫画家」、78歳「ギター職人」、103歳「声楽家」など、今も現役で活躍する15人の「最高齢」プロフェッショナルたちの仕事術です。
読み終えて思ったのは、みんな紆余曲折を経て、今に至ったということ。何度も失敗したし、回り道もした。決して楽してここまで辿り着いたのではないということ。こんなにすごい人たちでも、上手くいかないことのほうが多く、それでも昨日より今日、今日より明日と向上心を持ってやり続けてきた結果なのだということがわかります。
そんなに早く、結果を出そうと思ってはいけない。毎日の積み重ねが大事なのだと改めて思った。この本にはたくさんの格言にしたくなるような素晴らしい言葉が詰まっています。
「今、役に立たないと思っても、いつかきっとその知識、経験が役立つ時が来るということ――人生何があるのかわからないんだから…」「やりたいと思った時には、すぐ実行したほうがいい」「せっかく生まれてきたんだから、死ぬまで進歩したい」
一つのことを極めた人の語る言葉には、重みがあります。
掲載されている写真もすごくいい。生き生きとした表情、目の輝き、すごくパワフルな人たちばかりです。とても励まされるし、頑張ってみようかなと勇気が出てくる本です。
→著者別[ノンフィクション]
→ジャンル別[エッセイ・ノンフィクション]
ベストセラー作家が語る「書店にはドラマがある!」書棚にずらりと並ぶ背表紙を見るだけで、胸がときめく…自分にとっての「決定的な一冊」に出会った、そのときの衝撃!―本屋さんをもっと好きになる「ちょっといい話」。 (「BOOK」データベースより)
本屋さんにまつわる60篇のエッセイです。作家、評論家、俳優など様々な人の語る本屋さんの思い出は、私自身の想い出と重なる部分も多く、本好きな人はみな同じ道筋を辿ってきたんだなぁと改めて思う。
本屋は私にとって無限に広がる夢の世界であり、心を解き放つ場所でもある。1人になりたい。だけど、寂しさに捕らわれたくない。不安に押しつぶされたくない。心の空洞を埋めたい。そんな時に、ウロウロしていると心を潤してくれる素敵な一冊に出逢えたりする。
背表紙、紙の匂い、魅力的なPOP。なんでも揃う大きな書店もいいけれど、店主のこだわりと情熱が感じられる田舎の小さな書店が好き。平積みにして置いてあるベストセラーよりも、棚にひっそりと収まっている中から自分に合うものを見つけ出すのが好き。
本好きだった著者が、作家になってから本屋というものが微妙なものに変わった話が印象的だった。自分の本が置いてなかった時の落胆。目立たないところに置いてあると別の場所に移動してしまうこと、逆にたくさん置いてあると落ち着かない気分になったり、サイン会の恐怖だったり。多くの方々のそんなエピソードが面白く読めた。
本は昔に比べて、サイクルがどんどん早くなり、棚に置かれても数日で入れ替わることが多くなった。ネット書店は読みたい本が決まっている時はいいけれど、本屋さんでの、どんなものと出逢えるのかわからないドキドキ感も大切にしたいと思った。
→著者別[ノンフィクション]
→ジャンル別[エッセイ・ノンフィクション]
→テーマ別[図書館が舞台/本の本]
この本は、著名な方々50人が新入社員に向けて贈る言葉の花束です。励ましの言葉、職場生活へのアドバイス、新入社員の頃の思い出などが書かれています。
人生観や世界観についても語られているので、新入社員でなくても参考になることがたくさんあります。
狂言師、数学者、お天気キャスター、病院長など、実に様々な人がいて、色んな経験を覗けます。こんなに有名な人たちでも、新入社員の頃は大きな失敗をしてしまったり、幾度も挫折しているのを目にすると、少し勇気付けられたような気がします。
サントリー「窓際OL」である斎藤由香さんは、平凡な会社員のことについて書かれています。派手な仕事ではなく、地味で目立たない仕事をコツコツと続けるサラリーマンについてです。きっと同じ境遇の人はいっぱいいると思うし、仕事が嫌になった時、これを読むと元気が出てきそうです。
「誠心誠意ことにあたる」「信じられないくらい否定されて打ちのめされます」「志をたてたら、迷ってはいけない」「逆境に打ち勝つ勇気」と、厳しい言葉がいっぱいで、新入社員が読んだなら身がすくむ思いがするのではないでしょうか。
毎日、同じことの繰り返しだと、いつか飽きてくる時がやってきます。緊張感がなくなり、適当に済ませてしまうこともあるかもしれません。いつもいつも、全力を出し切っていては、そのうち壊れてしまいます。適度に取り組みつつ、ここぞと言う時ににだけ、全力を出すのがよいかと思います。
新入社員の人が数ヶ月経ってから読んでみると、この本に書かれていることが、より明確に理解できるのではないでしょうか。
仕事に緊張感がなくなった時、初心に帰りたくなった時、転職しようかと迷っている人にもぜひ読んで欲しい。この本は、より良く生きるための気づきを与えてくれます。
→著者別[ノンフィクション]
→ジャンル別[エッセイ・ノンフィクション]
→テーマ別[モチーフ]