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麻生弘毅作品

マッケンジー彷徨

マッケンジー彷徨 /麻生弘毅 著


タイトルにあるマッケンジーとは、カナダ最長の川で4,241kmあります。この本は、著者がたった1人、カヤックで2ヶ月かけて下った旅の記憶です。

風や雨に打たれ、1日10時間ほども川面で過ごす過酷な日々。灼熱の太陽、浸水、蚊の大群にクマとの遭遇。夜は焚火で温まり、星空の下、ウィスキーを流し込む毎日。
旅は自分との闘いだ。どんなに目をそらしたくても、向き合わざるを得ない裸の自分がいるのでした。

旅に興味があるわけではないのだけど、気合が欲しい時や刺激が欲しい時、ふとこういう本を読みたくなる。こんなすごいことをやる人だから、きっとワイルドで強く、行動的な人なのかと思っていたら予想と違った。臆病で不安で、変わりたいと願う等身大の男性の姿なのでした。

著者の抱える悩みや迷いは、誰もが持つものだと思う。テントの中、自己嫌悪に陥る姿は、洞穴で冬眠するクマみたいだし、部屋に引きこもってウジウジ悩む自分とも重なります。時折であう美しい文章にうっとりし、心の闇に共感し、飾らないありのままの著者に好感が持てた。

過去を悔い、未来を想像し不安を膨らませる日々。けれどひとたび荒野に飛び出すと、頼れるものは自分しかいない。カヤックが先へと進むにつれ、もがき身動きできなかった心がスーッと開放されていく。目指しているゴールとは別に、心がどこへ行き着くのかドキドキしながら読んだ。何かが劇的に変わったわけではないけれど、自分を許し、肯定できるようになった著者の変化が、肌で感じられるような本です。

→著者別[ノンフィクション]
→ジャンル別[エッセイ・ノンフィクション]
→テーマ別[モチーフ]


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