橋の上の天使 | |
穏やかな日常風景、妻がいる、子供がいる、安定した生活、家もある。
外側からみれば問題なく、ごく普通にみえる平凡な人々。
幸せそうにみえるようでいて、実は心の奥底に誰にも言えないような孤独が潜んでいる。
抑制された文章で静かに語られながら、主人公が気づいてもいないような奥深くに
眠っている何かを噴出させる。
15の短編集のうち、ほとんどが成熟期を迎えた主人公です。
郊外の住宅地、近所の人との付き合い、親としての振る舞い、夫としての勤め、大
人として紳士的にスマートに振舞わなければならない。
上手くいっているようにみえるのは、彼らが努力しているから。
歳を重ねれば、重ねるほど、塵のように小さなものが降り積もってくる。
はじめは小さなものでも、長い年月によって蓄積されたものは、もはや消えること
はない。
本人は気づいているのか、自覚がないのか、はたまたみないようにしているのか。
そうしなければ生活が進まないから。
ゆったりと流れてに浸っているつもりが、小さな出来事によって、荒い流れに押し流
されてしまう。
その荒い流れ(自分の中の蓄積されたもの)が受け入れられず、俯瞰した視点で今までいた日常を眺めている。
一度遠く離れて日常を眺めた後、再び日常に戻ると、風景がガラリと変わる。
色が変わる。受け止め方が違ってくる。
そんな内面を精妙に描いた作品です。