音もなく少女は | |
貧困家庭に生まれた耳の聴こえない娘イヴ。暴君のような父親のもとでの生活から彼女を 救ったのは孤高の女フラン。だが運命は非情で…。いや、本書の美点はあらすじでは伝わ らない。ここにあるのは悲しみと不運に甘んじることをよしとせぬ女たちの凛々しい姿だ。 静かに、熱く、大いなる感動をもたらす傑作。 (「BOOK」データベースより)
暴力、破壊、脅し。幾多もの苦難はこれでもかというほど次々に振りかかってくる。イヴ
の父親や、ミミの父親などこの小説にはろくでもない男たちが常に付きまとい、女たちを
絶望の淵に突き落とそうとする。
だが女たちは逃げなかった。たくましかった。ひたすら耐え忍び、運命に立ち向かってい
く姿は凛々しく感動を呼ぶ。
夫の暴力に耐え、イヴに惜しみない愛情を注いだ母・クラリッサ。ナチの迫害から逃れ心
身ともに傷を追っているフラン。耳の聴こえないイヴ。
痛みを知っているからこそ、他人には同じ思いをさせたくない。弱いものを守ろうとする
姿、固く結ばれていく絆、血縁を超えた繋がりが美しい。
悲しみの深さはいかほどか。こんなにも重いものを背負ってるというのに、人に優しくで
きる強さはどこから生まれてくるのだろう。
私たちは絶対に屈しない。未来を掴むために戦い続ける。そんな決意が全編から伝わって
きます。
どれだけ恐ろしかったことだろう。どれだけ胸が掻き毟られるような怒りを抱えていただ
ろう。何度も転び、それでも這い上がり乗り越えていく姿にはただ圧倒される。
セリフから息遣いが聴こえてくる。涙をこらえ現実と対峙しようとする強い眼差しがみえ
てくる。途切れた言葉の先から心の震え、魂の叫びが静かに伝わる。心に残る熱い作品で
す。
→著者別[海外小説]
→ジャンル別[一般小説]
→テーマ別[壮大なスケール]