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シャンサ作品

天安門 碁を打つ女

天安門/シャンサ 著


中国の天安門事件を題材とした作品。荒々しい声、鳴り響く銃声、天安門広場の緊迫し た場面から物語は始まる。
民主化運動の女性リーダーである主人公雅梅と、捜索を命じられた若き将校の趙。罪人と なってしまった雅梅とはいったいどんな人物なのか。彼女が残していったメモや日記から、 孤独な幼少時代、引き裂かれた恋など悲しい生い立ちがみえてくる。行間から滲み出る切実な叫び、 苦悩――そこには彼女の本当の姿があった。

トラックの運転手に匿われ、彼の両親がいる遠い海辺へと逃れていく。
そこで得た安息。窮屈に感じていた昔を振り返る場面。絶望から逃れ、自由を求めようと するたくましさ。日記という断片からは、迷宮から抜け出したような開放感、過去をここ に置き、止まっていた時計が動き出すかのような思考の流れがみえてくる。

趙は、日記を読むことで触発される。彼女を追っていたつもりが興味を持ち、少しずつ変 わっていく。彼の心の内は描かれていないけれど、おそらく自分の価値観や信じていたも のが覆されるような大きな衝撃だったのではないだろうか。

後半、森の中の山寺で出会う不思議な青年。ここでのイメージは静寂、ひとつひとつ の場面転換が鮮やかで生き生きとしている。
彼らを包み込む森が、雅梅の意思を投影しているかのように自在に形を変え、幻想的な雰 囲気を醸し出している。

相反する二人と、いくつもの異なる場面転換が上手く中和され、物語に深みを与えている。 希望という高い頂にやっと辿り着いた――そんな読後感。

→著者別[海外小説]
→ジャンル別[一般小説]
→テーマ別[詩的な小説]


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碁を打つ女/シャンサ 著


満州の女学生と日本人士官の運命的な出逢いを描いた作品。1937年、日本軍と抗日軍の対立が激化する中、千風広場で碁を打つ人々。戦乱と危機のさなか、ここにいる時だけは、現実を忘れられる。広場で対局を続けるうち、いつしか惹かれあうようになる。

彼と彼女にはそれぞれ、別の物語があり、交互に語られていく。
彼の世界では、日々、残虐な行為が行われ、限りなく「死」に近づいていっている精神状態に胸がヒリヒリする。彼女は、自分らしくありたいと思っている。だけど、不自由でままならない環境に苛立っている。

千風広場は、夢の中にいるようであり、哀しみも胸の痛みも、どこか遠くに置き忘れてきたかのように、現実が遠ざかる。お互いに名前も素性も知らず、ほとんど言葉も交わさない。だけど、碁を通して心の揺れが静かに伝わってきました。

気を研ぎ澄まし、向かい合い、同じ空気を共有していた二人。好きだとか、愛しているという言葉は出てこない。すぐに熱くなったり、求めたりもしない。抑えた感情からゆっくりと育まれた愛は、崇高で美しい。

→著者別[海外小説]
→ジャンル別[一般小説]
→テーマ別[詩的な小説]


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