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セシル・ディ・ルイス作品

丘の上のカシの木

丘の上のカシの木/ セシル・ディ・ルイス 著


こはく色の木もれ陽を裸いっぱいに浴びて、深い森のなかで祈りをささげる少女。丘の上 のカシの木だけが、多感な少女アンナの恋のめざめを知っている。父親と二人暮らしのア ンナの孤独な生活に、突然あらわれた美貌の兄妹と、時代への激しい怒りに燃える青年ス ティーヴ……。歓びと不安と惑いにみちた、それゆえいっそう美しい青春の愛の姿を、輝 くばかりのイギリスの森と海を背景に謳いあげた、詩人ルイスの青春の書。本邦初訳(裏 表紙より)

丘の上のカシの木はアンナの友達だ。話を聞いて欲しいとき、秘密を打ち明けたいとき、 寂しいときにはいつでも待っていてくれる。森の木々も鳥たちもきらめく太陽もすべてが 豊かに彩られていて美しい。

父との二人暮らしは息苦しく不自由だ。無言の圧力も、目に見えない囲いも、穏やかな言 葉の裏に隠れた軋轢も、複雑な心理と共に伝わってくる。会話を繰り返すたび、まるで戦 場で戦っているみたいだ。体力の変わりに気力を激しく消耗し、心の中を引っ掻き回され ていく。

クレイン兄妹との出逢いはアンナを大きく変える。お金持ちで美貌でありながら賢く自由 な発想を持つ人々。閉じられていた花がパッと開くような、どこまでも走り出して飛び跳 ねたいような開放感。まっさらな心に飛び込んでくるそれは心躍らせる。心地よい夢をみ ているようなまどろみ。無垢な少女が目覚めていく描き方が見事です。

木の下でのスティーヴとのピクニック。だけどすぐには恋に発展しない。自我から恋、そ して性への目覚めはとてもゆっくりとじれったいぐらいのテンポで進んでいく。不安も戸 惑いも乗り越えた先にある育まれた愛。ロマンティックで眩しくてとろけてしまいそうな ほど。
古風ではあるけれど、時が経ても色あせないずっと心に残しておきたいような作品です。

→著者別[海外小説]
→ジャンル別[青春・学園小説]
→テーマ別[詩的な小説][美しい風景描写][乙女のための本]


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