大地(1)〜(4) | |
中国を舞台に、王龍の3代に渡る人々の物語です。
貧しかった王龍は阿蘭を嫁にもらい、努力と忍耐によって必死に働き一代で富を築く。
3人の息子達が産まれ、たくさんの土地を手に入れた王龍は変わっていく。
地味で美しいとは言えない妻に不満を持つようになった彼は、愛人を家に連れ込み、言われるままに洋服や高級な食べ物を買い与え堕落していくのです。
阿蘭はどんなにか辛かったことでしょう。無口で何も言わない阿蘭だけれど、その心の内は、哀しみと寂しさでいっぱいだったのだと思います。
息子たちは、それぞれ性格もバラバラで、お金を操っているようでいて、実はお金 に振り回されている。 貧しい者と金持ちとの隔たり。お金があるがゆえに、欠如しているもの。 周りの人への見栄もあり、価値観がどんどん壊れていく。
登場人物で魅力的だったのが息子達の妻になる女性達です。 男性からみたら、おしゃべりでうるさく無知だと思われていたけれど、実はたく ましく、聡明な女性達だと思いました。
この時代、女性の立場は弱く男性には物のように扱われる時代でした。 纏足の女性や、結婚は親同士が決めてしまうことが当然の時代。 貧しかった時代、女の子が産まれると役に立たないということで、お金持ちの家に 奴隷として売られたりしていました。
なぜ纏足?なぜ恋愛して結婚しないのか?なぜ親に連れてこられた相手と結婚して
しまうのか?
現代に産まれた私には、教科書で事実だけを淡々と述べられても、さっぱりわかり
ませんでした。断片と断片が並べられていてもそのつながりはみえてこないから。
この本には、そこに生きる人々の内面や葛藤、時代の移り変わりが、しっかりと描か
れています。
もう1人印象的な人物は王龍の孫にあたる元。
彼は父への反発から都会へと飛び出します。
そこは、今までいた場所とは違い、華やかで何もかも価値観の違う街。そんな異国の文化に触れた時の驚き、戸惑い、視野が
ぐっと広がる様子が丁寧に描かれています。
彼は常に何かを持ちたい、希望を見出そうとするのだけど、都会にも田舎にも馴染めず絶望している。
複雑な心境を抱えた彼の姿が重くのしかかってきます。
ここに生きた人々は、めまぐるしく変わる歴史に翻弄されながらも、幸せになりた
いと願った人達でした。
→著者別[海外小説]
→ジャンル別[歴史・時代小説]
→テーマ別[壮大なスケール]/
[異国情緒]