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ロバート・ネイサン作品

ジェニーの肖像 夢の国をゆく帆船

ジェニーの肖像/ロバート・ネイサン 著


1938年、冬のニューヨーク。貧しい青年画家イーベンは、夕暮れの公園で、一人の少女に出会った。数日後に再会したとき、彼女ジェニーはなぜか、数年を経たかのように成長していた。そして、イーベンとジェニーの時を超えた恋が始まる…詩人ネイサンの傑作ファンタジイ。(「BOOK」データベースより)

霧にかすむ遊歩道も、スケートリンクの冷たい空気も、ピクニックもひとつひとつの情景が幻想的で忘れられない。色に例えるならセピア色。読んでいてこんな場面をどこかでみたような、夢の中を泳いでいるような不思議な気分になりました。古めかしくひっそりとしていて、美しい絵画をみているかのようです。

ジェニーとイーベンの恋は、時が経つに連れ、喪失感が漂ってくる。いつか終わりが来るとわかっているから。ジェニーが大人になり、イーベンの歳に近づいた時、確固たる愛が芽生える。異なる時間枠に生きていた二人の時が重なる。

小さな子供だったジェニーが、数ヶ月の内に少女になり大人へと変わっていく。ジェニーはイーベンに早く追いつきたいと言うけれど、読後はイーベンが置き去りにされたみたいに哀しい気持ちでいっぱいになりました。まだみていたい夢なのに、否応無く起こされ、現実に引き戻されたみたいに、甘く切ない余韻が残ります。

ものすごいスピードでイーベンの元を駆け抜けていき、美しく咲いた後、パッと散りゆく花のように跡形もなく消え去ってしまう。けれどイーベンの心の中には、ジェニーの面影がくっきりと刻み込まれているのです。

→著者別[海外小説]
→ジャンル別[SF・ファンタジー・ホラー]
→テーマ別[詩的な小説][タイムトラベル]


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夢の国をゆく帆船/ロバート・ネイサン 著


ニューヨーク市はブロンクスに住む大工のペケット氏、船乗りになることを夢見るあまり、ひょんなことから車輪付きの手製ヨットに乗りこみ妻を捨て家を捨て、放浪の旅に出ることになった。船客は孤独なウエイトレス、貧しい歯医者、それに仔牛が一頭。遥かなフロリダ目指し、野越え山越えトコトコ走っていったのだが……!『ジェニーの肖像』を始め幾多の傑作を発表してきた、アメリカで最もポピュラーな作家ロバート・ネイサンが描く、心暖まる愛と夢の物語。(裏表紙より)

この物語のいいところは、帆船の旅に出るのが子どもではなく、大人、それも実生活ではイケてない3人だからこそリアリティがあってよかった。特にペケット氏は老年にさしかかる頃。年を取れば取るほど、背負うものと責任が増え、旅立つのは勇気と決断が必要になってくるのではないでしょうか。

陸地を離れ遥か遠くまでいくこと――それは距離の分だけ実生活の営みを遠ざけることにもなります。いったん何もかもを捨て去ると、心が軽くなります。そして訪れる快復の時間――他人同士だからこそ、お互い干渉しあわず船旅を謳歌できたのだと思う。

魔法の国を彷徨っているようでもあり、夢の国を彷徨っているようでもあり、終わりが近づくにつれ、遠足の終わりのような切ない気持ちになりました。この物語は、子どもへ向けてではなく、現実に疲れきった大人への癒しの寓話だと思う。

→著者別[海外小説]
→ジャンル別[SF・ファンタジー・ホラー]


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