モーパッサン短篇選 | |
15の短編からなっています。
幻想的なもの、皮肉めいたもの、報われない恋、哀愁漂うものなど、どれも形は違うけれど、印象深い作品ばかりです。
その土地に生きるリアルな人間像と、豊かな風景描写が魅力的。
『水の上』は幻想的でありながら、背筋がぞくぞくするような怖さがあります。
たった1人、広い川の上でなんとか舟を動かそうとする主人公。だか、どうにもならず最後には諦め、じっとしていると霧に覆われ、視界が閉ざされていく。
それから襲われる幻覚は、耳を塞ぎ、目を覆ってしまいたくなるほど。
この先、どうなるのか、何が待ち受けているのか、無事に抜け出せるのか。
主人公と一緒になり、ちょっとした物音にハラハラしたり、じっと目をこらし、進んでいった。
『メヌエット』は心が打ちひしがれるような大きな哀しみではなく、たまたまそこに
居合わせた偶然によって垣間見れる、密やかな哀しみを描いたもの。
もう戻れない過ぎ去った日々を、懐かしむように踊る老いた2人。
突然泣き出したくなる主人公。
感動と、もの哀しさと寂しさとか、色んなものがごっちゃまぜになって、込み上げてくる涙。ひっそりとした余韻が漂う。
どの短編も作られた感じがまったくしなくて、ありのままの人間がそこにいるといった感じ。人間ってこんなもんだよなぁ、醜いところも、残酷なところもあるし、通じ合わなかったり。感動的でないラストなところが良い。
→著者別[海外小説]
→ジャンル別[一般小説]
→テーマ別[美しい風景描写]