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ロイス・ローリー作品

ギヴァー 記憶を注ぐ者 ギャザリング・ブルー 青を蒐める者

ギヴァー 記憶を注ぐ者/ロイス・ローリー 著


いかなる不便もない。争いやもめごとは起こらない。飢餓も貧困もない―生活からすべての苦痛がとりのぞかれたコミュニティは、まさに理想郷に見えた。しかしその成立の秘密を知った時、少年は故郷を脱出し、世界を「より完全な姿」に戻すための旅に出る…緊密かつシンプルなプロット、とぎすまされた簡素な筆致、心ふるわせるストーリー展開、人間の生への深い洞察によって全世界を魅了しつづける近未来SFの傑作、待望の新訳!1994年度「ニューベリー賞」を受賞。 (「BOOK」データベースより)

全4部作の第1作目です。
職業も結婚もすべて長老会で管理され、飢餓、貧困などもない平和な社会。一見すると理想的に思われるのだけど、読み進むうちに徐々に不安が広がっていった。全て与えられ管理されるということは自分の頭で考え選択する自由がなくなるということでもあります。与えられるものに安住する日々は平和だけれど、人生を喜怒哀楽のないつまらないものにしているのです。

感情を抑制されているので争うことはない。会話が規律に基づき統制されていて、横道に逸れることはない。事務的で気持ちのこもらない会話は味気ない。主人公であるジョナスはレシーヴァーに任命されます。記憶を受け継ぎ秘密を知ってしまったジョナスの心の動きが鮮やかで大きな衝撃と悲しみが伝わってきたのでした。

色や音楽があり、愛情や暖かさもあった頃の時代……苦痛も戦争も嫌な事もたくさんあるけれど、それでも尚、かつてそんな風に暮らしていた人々がいるということが懐かしく愛おしく思えるのです。

ジョナスの長い旅路――少年の勇気に胸が熱くなります。そして彼と共にいつくもの道を超え、孤独、疲労、寂しさなど色んな感情が込み上げてきたのでした。

壮大なテーマをとりあげたこの作品は、私たちに気づきを与えてくれます。呆然と立ち止まり考え込んでしまう。今ある暮らしが本当にこれでいいのか、幸福とは何かなど想いを巡らせずにはいられません。

→著者別[海外小説]
→ジャンル別[SF・ファンタジー・ホラー]
→テーマ別[壮大なスケール]


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ギャザリング・ブルー 青を蒐める者/ロイス・ローリー 著


脚の不自由な少女キラは、母を亡くし、天涯孤独の身となってしまった。「欠陥のある者」に非寛容な村のおきてにしたがい、「守護者評議会」の評定をうけることになったキラ。しかし、召喚された彼女を待っていたのは、思いもよらない運命だった…「青という色」をめぐるスリリングな展開のなかに、前作『ギヴァー』同様、思索と議論を呼びさます巧妙なしかけをちりばめた、“フィクションの達人”ローリーの面目躍如たる傑作。】(「BOOK」データベースより)

全4部作の第2作目です。
今回の舞台は、前回とは違うコミュニティで、主人公は脚の不自由な少女キラです。色も音楽もあるけれど、閉鎖的で殺伐としていて愛情や優しさとは程遠い社会。そんな中でも優しさと強さを失わず運命に立ち向かおうとする彼女の姿がまぶしく映ります。

読み進むうち、やはりこの社会でも何かが隠されていて、いびつな構造の上に成り立っていることがみてとれます。はっきりとした疑惑は感じないけれど何かがおかしくてどこか引っかかるのです。

一部の権力者たちに飼われ搾取されるのか、自分自身の「幸福」を求め歩みだすのか――二つのうちどちらかを選ばなければならないとしたらあなたはどちらを選ぶだろうか。
「身体の障害」を抱えるものは排除されてしまうのだから、キラの置かれた状況は過酷といえる。「人間の在り方」「幸福」「創造性」など根源的な問いが胸に残り、色々なことを考えさせられるのです。

謎が明かされぬまま終わり、物語が大きく動き出しそうなところで幕を閉じる。前作に比べると小さくまとまっている印象があり、やや物足りなく感じる。でもキラの「決断」がこの先、何を見出し、何を変えていき、どのような未来を創っていくのか続きが待ち遠しい。深みのある展開を予感させる終わり方になっています。

→著者別[海外小説]
→ジャンル別[SF・ファンタジー・ホラー]
→テーマ別[壮大なスケール]


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