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アンナ・カヴァン作品

氷/アンナ・カヴァン 著


異常な寒波のなか、夜道に迷いながら、私は少女の家へと車を走らせた。地球規模の気象 変動により、氷が全世界を覆いつくそうとしていた。やがて姿を消した少女を追って、某 独裁国家に潜入した私は、要塞のような「高い館」で、絶対的な力で少女を支配する「長 官」と対峙するが…。刻々と迫り来る氷の壁、地上に蔓延する抗争と殺戮、絶望的な逃避 行。恐ろしくも美しい終末のヴィジョンで読者を魅了し、冷たい熱狂を引き起したアンナ ・カヴァンの伝説的名作。 (「BOOK」データベースより)

荒れ果てた地、視界を遮るほどの激しい雪、一面真っ白に彩られた世界。街は危機的状況 から、抗争や略奪などが行われている。迫り来る氷は、冷たさだけでなく、読み手に切迫 感をも与えている。着々と広がる氷が脅威に感じられ、今にも覆い尽くすのではないか、 逃げ場を失うのではないかとハラハラするのだ。

その中でも主人公の男の異常ともいえる行動に圧倒される。少女を執拗に追いかけ捜し求 める姿は、驚異的だ。自分が生き延びたいのではなく、もはや少女を捕らえることこそが 生きる目的のようにみえてくる。
時折現れる幻覚と、過去の回想と夢。男の行動は、よくよく考えるとおかしなことがいっ ぱいなのに、思考の渦に飲み込まれ、いつのまにか流されてしまっている。

着実にやってくる氷と雪のみになる未来の世界。底冷えするような冷気に、肌までヒリヒ リしてきそう。ここに出てくる氷は、黒く暗黒のようだ。割れる氷、崩れ落ちる氷、静寂 が生む恐怖。たくさんの街や森の描写は、絶望的な状況なのに幻想的で美しい。

→著者別[海外小説]
→ジャンル別[SF・ファンタジー・ホラー]
→テーマ別[詩的な小説][世界の終末]


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