千の輝く太陽 | 君のためなら千回でも(上巻) |
君のためなら千回でも(下巻) |
舞台はアフガニスタン。戦争と飢餓、暴力に差別。日本にいる私には考えられない壮絶な世界です。 そんな中で出会う2人の女性が主人公のお話です。
女性には生きにくい社会。屋外では全身をブルカで覆うことを強いられ、働くことを禁じられ、外出は男性の親族を連れて歩かなければならない。
あちこちで鳴り響く砲撃の音、繰り返される殺戮。多くの人が家を失い、大切な人を亡くしました。
最初は仲が悪かったマリアムとライラ。
不幸な境遇を抱え、ラシードと結婚したマリアム。若く美しいライラに嫉妬し、疎ましく思ったり、そのライラに夢中になる夫をみて虚しくなる気持ちはすごくよくわかります。
ライラは両親を亡くし、ある決意を胸にラシードと結婚する。たった1人でその道を選び実行することは、どれだけ勇気がいることでしょう。
生き抜くためにひたむきなその姿に心がジーンとなるのです。
お互いに大きな悲しみを秘めているのに、繋がり合えない2人。それが徐々にゆっくりと打ち解けて、わかりあえるように
なっていく様子が感動的でした。
飢えや貧困、理不尽な扱い、暴力など次々に起こる悲劇。
過酷な運命を背負いながらも、力強く生き抜く2人。
この環境からなんとか抜け出せないものか。平和な日々はいつ訪れるのか。
誰か助け出してくれる人はいないのか。願わずにはいられませんでした。
あまりにも悲しいことが多く、救いがないこの小説。だけど、2人の姿は美しいと思った。眩しいと思った。
ずっと耐え忍びながらも、時には抗い大切なものを守ろうとした。
自由を求め、行動する姿にはたくましさを感じた。
孤独と不安の中でも必死に何かを掴み取ろうとする姿。決して離れることのない固い絆。
私はこの本を読んで、目に見えないものの大切さ、過ぎ去っていく一瞬一瞬の大
切さを想いました。
→著者別[海外小説]
→ジャンル別[一般小説]
→テーマ別[壮大なスケール]/
[異国情緒]
「君のためなら千回でも!」召使いの息子ハッサンはわたしにこう叫び、落ちてゆく凧を 追った。同じ乳母の乳を飲み、一緒に育ったハッサン。知恵と勇気にあふれ、頼りになる 最良の友。しかし十二歳の冬の凧合戦の日、臆病者のわたしはハッサンを裏切り、友の人 生を破壊した。取り返しのつかない仕打ちだった。だが二十六年を経て、一本の電話がわ たしを償いの旅へと導く―全世界八〇〇万人が涙した、衝撃のデビュー長篇。(裏表紙より)
一貫してアミールの視点から語られていくので、ハッサンの心の内はみえない。きっと辛
いだろうな、寂しいだろうなと想像するのだけど、彼の姿は凛々しく真っ直ぐだ。
アミールに訳のわからない気持ちをぶつけられた時も、怒りもせずただ悲しみに暮れていたハ
ッサン。最後まで優しかった彼を思うと、なんとも言えない気持ちが押し寄せてく
る。
アミールの犯した過ち、それはずっと彼の心の中に伸し掛かり苦しむことになる。言って しまいたいけど、声が出ない、臆病ゆえに気持ちを押し込めてしまう彼の姿に、心の動揺、 心臓の高鳴りまでもが伝わってきそう。
ほんの小さなほころびを修復しようとし、あるいは目を背けようとし、とっさに出た言葉 や行動。それは悪いほうへ転び、補おうとすればするほど切れ目は大きくなり、もはや 修復不可能となる。
罪の意識から逃れたいがためについた大きな嘘。それは周りの人をも巻き込み悲しみを生む。
彼はずっとこのしこりを抱えて生きて行く事になるのだ。
離れ離れになった2人。その26年後、一本の電話により旅立つところで物語は終わる。
これからどうなっていくのか続きが楽しみです。
→著者別[海外小説]
→ジャンル別[一般小説]
→テーマ別[壮大なスケール]/
[異国情緒]
「もう一度やり直す道がある」わたしとハッサンをよく知る友人ラヒム・ハーンは告げた。 電話回線の向こうにあるのは、わたしの過去、まだ償いの終わっていない罪。わたしは迷 いをふりはらい、パキスタン行きのフライトに飛び乗った。そこに、わたしを打ちのめす 哀しい真実が待ち受けているとは知る由もなく―アメリカとアフガニスタンを舞台に、少 年時代の罪に立ち向かう男の姿を感動的に描き上げる、世界的ベストセラー。(裏表紙より)
26年後のアフガニスタンは、アミールが子供時代を過ごしたものとは違う激動の時代な のでした。タリバンの凶行、ソ連の侵攻、内戦、飢えや貧困など、悲惨な状況が目に飛びこ んできます。
ラヒム・ハーンと会い、そこで知った衝撃の真実。アミールの決意。それから起こる出来 事は重苦しく、ずっと絶望の底にいるかのよう。私たちの国ではもっとすんなり行くこと でも、ここでは難しい。混乱した時代背景と子供たちの現況が伝わってきます。
忘れようとしても忘れられなかったあの日々、取り戻せない時間、嘘と裏切り。考えない
ようにしても、どうしても自然に浮かび上がってしまう。
どんなに遅すぎだとしても何もしないよりはいい。もう一度走り出したアミールの姿が心
地よく、胸いっぱいに希望が広がっていきました。
→著者別[海外小説]
→ジャンル別[一般小説]
→テーマ別[壮大なスケール]/
[異国情緒]