赤い薔薇ソースの伝説 | |
台所で生み落とされ、台所の匂いに包まれて成長した美しい娘ティタ。台所は彼女の聖域。 伝統の鎖から解放される唯一の場所だった…。革命の嵐が吹き荒れるメキシコの農場を舞 台に、不思議な力に守られながら、禁じられた愛に身をこがす女の数奇な運命を描く。 (「BOOK」データベースより)
末娘のティタは、一生母親の世話をしなければならないという古いしきたりによって、恋 人ペドロとの仲を引き裂かれる。母親エレーナに言われるまま、姉・ロサウラと結婚した ペドロ。そうすればティタの側にずっといられると考えたのだ。
愛する人が姉と結婚、なんと理不尽で残酷なのでしょう。
涙を流しながら作った結婚式の「杏子のウェディング・ケーキ」
すると不思議なことに招待客たちは次々に涙を流したのです。
彼女がペドロを思い浮かべ、気持ちを注いだ「薔薇の花びらをあしらった鶉」は、媚薬と
なり、みなの熱情を刺激する。ティタの心象風景が作った料理に伝染してしまったのです。
12章で語られていくこのお話は、タイトルが4月『胡麻とアーモンド入りの七面鳥のモー
レ』、7月『牛の尻尾のシチュー』などカレンダー仕立てになっていて、料理のレシピも
紹介されています。
聞いたことのない料理もレシピや調理している様子を覗いていると、行間から匂いが立
ち昇り、美味しそうな色合いが見えてくるようです。
母親との葛藤、亡霊などゾッとする場面もありますが、ティタはしきたりにとらわれる
ことなく、自分らしい生き方を見つけていきます。
一生の大半を台所で過ごし、愛する人への想いを口にすることもできなかったティタ。
内に秘めた想いを料理に注ぎ続け、生きてきた彼女がいじらしく映ります。
→著者別[海外小説]
→ジャンル別[一般小説]
→テーマ別[食べ物]