真珠の耳飾りの少女 | 貴婦人と一角獣 |
父親が失明し職を失ったため、フェルメール家に女中として奉公することになった16歳の 少女フリート。フェルメールの絵をモチーフに、のちに絵のモデルとなるフリートの視点 から日々を綴った架空の物語です。
舞台は17世紀オランダ。横を流れる緑の運河に、教会や広場の様子、生活の営みまでも、
その時代にタイムスリップしたかのように流れてくる光景。
家族と初めて離れ、奉公先へと向かうのだけど、気分はどんよりと重い。大きな家に、
新しい人々、これから待ち受けていることを想像するだけで、不安になるのだ。心細
さが現れたような心もとない足取り、見慣れた風景を愛おしそうにみつめる少女の眼
差しがみえてくるようです。
フェルメール家に入って最初に驚くのが、玄関の間にずらりと飾られた絵画の数々。たくさ んの子供たちに洗濯物の山、日々の生活は忙しく戸惑うばかりだ。そんな中、旦那様のお手 伝いをし、二人で過ごす時間がなんとも美しい。
お互いに触れるでもなく想いを伝えるでもない。旦那様と召使いという間柄のため、常に距
離を意識した控えめな振る舞い。けれど、心の内は旦那様への想いを静かにふくらませて
いく。
少女の熱っぽさとグラリと揺れる感情。淡い恋心と呼ぶにはもったいない。それよりももっ
と高貴なもの、心から慕い、ただお側にいたいという澄んだ気品を感じたのです。
絵は、モデルになった人物や描かれた経緯を知ることにより、ぐっと身近に感じられるの ではないでしょうか。表紙の絵をみながら、実在の絵の舞台裏でも、もしかしたら・・・・・・ と想像を巡らせずにはいられない。
→著者別[海外小説]
→ジャンル別[一般小説]
→テーマ別[乙女のための本]/
[モチーフ]
「貴婦人と一角獣」は、6枚の連作タピスリーをモチーフにした物語です。貴族ジャン・ ル・ヴィストの屋敷で図案を依頼される絵師ニコラ。ジャンの奥方・娘クロード・織師 ジョルジュやその娘アリエノール・職人たちなど章ごとに視点が変わるので、絡み合う人 間模様がよくわかります。
舞台は15世紀末のパリとブリュッセル。下絵を依頼され完成するまでの3年という長い年
月を、製作工程や工房の様子と共に描かれている。
身分の違いから引き裂かれた恋、家業を助けるため最も嫌悪する男性と結婚する運命に
ある女性、言いたいことも言えず、やりたいこともやれずひたすら耐える奥方などこの
時代の女性たちは不自由だ。
一方、パリとブリュッセルを交互に行き来し、女性をみたらすぐに手をだす軽薄な男ニ
コラ。だらしなくて無責任なやつだけれどなぜか嫌いになれない。
クロードのお転婆で好奇心いっぱいな所も好きだし、アリエノールの大胆さも好き。
クロード、アリエノールなど4人の貴婦人が織り込まれ完成したタピスリー。表紙や見返 しにあるタピスリーの写真を眺め、物語を思い返す。意のままにならず諦めもあるけれど 決意も感じられる。そんな彼女たちの強さや歴史、これから待ち受けている未来を思い浮 かべ感慨に浸る。
→著者別[海外小説]
→ジャンル別[一般小説]
→テーマ別[モチーフ]