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アンヌ=ソフィ・ブラスム作品

深く息を吸って

深く息を吸って/アンヌ=ソフィ・ブラスム 著


主人公は、19歳のシャルレーヌ。静寂が押し寄せ、過去を見つめ、自分の犯した罪と向き 合い静かに夢想する――そんな独房の夜から物語は始まる。どこまでも暗く、孤独で、それ でもなお人を殺した事を後悔していないという彼女。過去の出来事を次から次へと思い浮 かべるのだけど、懐かしがるでもなく、嫌悪するでもなく淡々としている。
まるで大きな嵐が過ぎ去った後の穏やかさのように。ずっと闘い続け、精魂尽き果て、や っと終わった闘いに安堵しているかのように。

身動きできない閉塞感、喉の奥に何かが詰まっているみたいな息苦しさ、自分には何も価 値がないと思い込み、塞ぎ込むところ――10代の頃に感じた繊細な心の動きが濃密に描か れています。
もっと周りを見渡せば広い世界があるのに、そんな風に悩んでいるのはあなただけじゃな いよとシャルレーヌに伝えたくなりました。

愛情が欲しいと強く願っていたシャルレーヌ。それは捨てられた飼い犬が、誰かに拾って もらうのをひたすらに待ち続けている姿を思い起こさせます。彼女は弱かった。愛情に飢 えていた。純粋さゆえに、埋められない溝をなんとか埋めようと、傷つくとわかっていな がらも破滅に向かうしかなかった。
狂おしいほどの想い、抑えられない狂気、いつか常軌を逸して壊れてしまうのではないか とハラハラする。不安、苦悩、孤独、心の叫びが聞こえてきそうなリアル な描写に胸がキリキリと痛んだのでした。

→著者別[海外小説]
→ジャンル別[青春・学園小説]
→テーマ別[詩的な小説]


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