深く息を吸って | |
主人公は、19歳のシャルレーヌ。静寂が押し寄せ、過去を見つめ、自分の犯した罪と向き
合い静かに夢想する――そんな独房の夜から物語は始まる。どこまでも暗く、孤独で、それ
でもなお人を殺した事を後悔していないという彼女。過去の出来事を次から次へと思い浮
かべるのだけど、懐かしがるでもなく、嫌悪するでもなく淡々としている。
まるで大きな嵐が過ぎ去った後の穏やかさのように。ずっと闘い続け、精魂尽き果て、や
っと終わった闘いに安堵しているかのように。
身動きできない閉塞感、喉の奥に何かが詰まっているみたいな息苦しさ、自分には何も価
値がないと思い込み、塞ぎ込むところ――10代の頃に感じた繊細な心の動きが濃密に描か
れています。
もっと周りを見渡せば広い世界があるのに、そんな風に悩んでいるのはあなただけじゃな
いよとシャルレーヌに伝えたくなりました。
愛情が欲しいと強く願っていたシャルレーヌ。それは捨てられた飼い犬が、誰かに拾って
もらうのをひたすらに待ち続けている姿を思い起こさせます。彼女は弱かった。愛情に飢
えていた。純粋さゆえに、埋められない溝をなんとか埋めようと、傷つくとわかっていな
がらも破滅に向かうしかなかった。
狂おしいほどの想い、抑えられない狂気、いつか常軌を逸して壊れてしまうのではないか
とハラハラする。不安、苦悩、孤独、心の叫びが聞こえてきそうなリアル
な描写に胸がキリキリと痛んだのでした。
→著者別[海外小説]
→ジャンル別[青春・学園小説]
→テーマ別[詩的な小説]