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ダイアナ・ブロックホーベン作品

ジュールさんとの白い一日

ジュールさんとの白い一日/ダイアナ・ブロックホーベン 著


もしも突然パートナーが死んでしまったらあなたはどうするだろうか。テーブルには、夫 のジュールがいれてくれたコーヒーに、朝食も用意されていていつもと変わらない朝。な のにソファーに座る夫はもう動かない。話しかけても答えてくれない。死んでしまったと いう事実がすぐには受け入れられないアリス。この本は、アリスとジュール、自閉症の少 年ダビットの濃密な24時間を描いた作品です。

ジュールの向かいに座りじっと見入ったり、横に座りもたれかかってみたり、靴を履かせ てみたり色々なことをする。その合間には普段と変わらぬ日常を過ごし、思わず話しかけ てしまったりする。夫がもう死んでいるということをつい忘れてしまう。みつめているう ち、過去へと思いを巡らし回想する。

決して楽しいことばかりではなく、悲しい事、辛い事など夫婦生活50年もあれば、たくさ んある。恨み言をぶつける場面もあるのですがその感情も薄れ、すでに去ってしまった今、 深い愛情が膨らむのだ。

動揺するアリスに、「ジュールさんは、いないです。これはジュールさんの外側だけです」 というダビット。彼の言葉は感情を伴わず無機質といえるのだけど、アリスにとっては、 暖かく現実へと引き戻してくれるものとなる。

最初から死んでいたので、ジュールさんという人物像はよくわからない。ただ二人の共有 していた習慣、日常生活に漂う感情の行き来する様などが色濃くみえてくるのです。
人が死ぬと実にたくさんの事務的な手続きが待っている。身内がやってきて、葬儀屋がや ってきて、バタバタしてゆっくり哀しみに浸る時間もない。あともう少し、もうちょっと だけこのままでと連絡を先延ばしにするアリスの想いが胸に響きます。

夫の身体に触れ、冷たくなっていることに気づくアリス。そして実感する。もうここにジ ュールはいない、これは抜け殻なのだと。この長い一日は、アリスに必要な時間だったの だと思う。そこに辿り着くまでの細やかな感情の動きが見事な作品です。

→著者別[海外小説]
→ジャンル別[一般小説]


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