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ジーン・アウル作品

ケーブ・ベアの一族 (上) ケーブ・ベアの一族 (下)
野生馬の谷 (上) 野生馬の谷 (下)
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マンモスハンター(下) 平原の旅 (上)

ケーブ・ベアの一族 (上) エイラ 地上の旅人(1)/ジーン・アウル 著


舞台は紀元前3万年ころ。突然の大地震で家と家族を失った5歳の少女エイラは、食べ物を 求めさまよい歩いていた。その道すがらケーブ・ライオンに襲われ、倒れているところを ネアンデルタール人の一族に発見され、拾われる。生活を共にしていくうちに、クロマニ ヨン人であるエイラと、この一族との違いが現れ、エイラを悩ますことになる。

ネアンデルタール人とはどんな一族なのか。まず骨太でずんぐりしていて、がにまたであ る。腕や足が曲がっていて、後頭骨が出ているので頭が長く見えるそうです。その中にい るエイラはといえば、白い肌に金色の髪、すらりと長い足に青い瞳、外見からしてまった く異なっているのだ。

最初に言葉を覚えることの難しさ。言葉だけでなくこの種族は手振りで話す。懸命に手を 動かし伝えようとするのだけど、手振りで思いを伝えるという表現がエイラの種族にはな かった。理解したいのだけど、何かが抜け落ちてる。わかりたい、知りたいと思い、やっ と通じ合えた場面は感動的です。

そして何よりすごいのが、考古学に関する部分です。著者が入念に調べ研究したからこそ ここまで書けるのだ。どんな洞穴が住むのに適しているのか、武器の作り方、狩の仕方、 マンモスを仕留めた時の描写や、解体の仕方。解体したものは、肉だけでなく、皮、脂ま でも色々な用途に役立てることができることなど勉強になることがいっぱいです。

ネアンデルタール人は、滅びつつある種族で、クロマニヨン人は新時代の種族といえます。 一族に受け入れられつつある一方で、反感を持ち激しい憎悪をぶつけてくる人間もいて…
太古の時代、洞穴で暮らす人々に豊かな草原、たくさんの動物。みるものすべてが珍しく、 ダイナミックに迫ってきます。
このシリーズは、全6巻まであるそうです。徐々に読んでいこうと思います。

→著者別[海外小説]
→ジャンル別[SF・ファンタジー・ホラー]
→テーマ別[壮大なスケール]


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ケーブ・ベアの一族 (下) エイラ 地上の旅人(2)/ジーン・アウル 著


投石器を使い、狩をしたことを一族に知られてしまったエイラは、罰を受けることになる。 死ののろいをかけられ、行き場をなくしたエイラは一人小さな洞穴へ向かう。自分で採集 かごを作り、草を集め寝床を作り狩をした。真っ暗な洞穴で一人で過ごすなんてどんなに 心細かったでしょう。けれどもエイラは必死に生き抜こうとする。決して諦めない、強く たくましい姿に感動します。

シリーズ2作目では、族長であるブルンやモグール(まじない師)であるクレブの苦悩も 描かれています。
気持ちはエイラを許したい、受け入れたいと思っているのに、感情に流されず冷静な判断 を下さなければならないブルン。例外を認めたり、族長らしからぬことを口にしたら面目 を失ってしまう。気持ちと立場の狭間で揺れる複雑な心境がみえてきます。

クレブは、生まれつき片目と片腕がない。障害を負った男をみながどんな風にみていたか、 どんな扱いを受けてきたか、クレブの寂しさと孤独が伝わってきました。そんな中、エイ ラだけは、自分を愛してくれた、抱きしめてくれた、それがどんなに嬉しかったかブルン に語る場面では、胸がいっぱいになりました。

後半は、新しい族長となったブラウドの決定が、みなを脅えさせる。ずっと古い伝統と慣 習に慣れてしまっている一族は、予期せぬ出来事にただ唖然とするばかり。これまでの平 穏な日々が危ぶまれる予感、エイラとプラウドとの確執、まだまだ色々な事が起こりそう です。

→著者別[海外小説]
→ジャンル別[SF・ファンタジー・ホラー]
→テーマ別[壮大なスケール]


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野生馬の谷 (上) エイラ 地上の旅人(3)/ジーン・アウル 著


新しい族長となったプラウドの無慈悲な仕打ちにより、洞穴を後にする。たった一人で、 同じ種族を求めての旅は長く過酷なものとなる。野生馬の住む谷にしばらく留まること にしたエイラは、子馬(ウィニー)やケーブ・ライオンの赤ん坊(ベビー)と出会い、 生活を共にする。

5歳の時の地震により、家も家族も失ったエイラにはそれまでの記憶がない。どんな言葉 を話す種族なのか、果たして自分が受け入れられるのかどうか、孤独から開放されたいと 思う一方で不安がつきまとう。

谷で暮らすエイラの場面と交互に、ジョンダラーとソノーランの兄弟が描かれている。こ れがエイラと同じ種族なのかなと思い、早く出会わないかなと期待しながら読んでいたの だけど、これがなかなか出会わないのだ。
兄弟の後ろから今にもヌッとエイラが出てくるんじゃないかとか、兄弟が、狩をするエイ ラをみつけ、運命的な出会いが待ち受けているんじゃないかとか、終始ワクワクしながら 読んだのでした。

ジョンダラーとソノーランは、ゼランドニー族というのだけど、兄弟が旅する道のりには、 シャラムドイ族、ハドゥマイ族などさまざまな人々が登場する。もしも敵意のある人間だ ったら・・・・・・とか、次にどう動くのか・・・・・・と私までハラハラしてしまう。
言葉が通じないけれど、身振りや片言の単語で少しずつ繋がりあっていくうちに、一族の 慣習の違いや歴史がほんのちょっと垣間見れたようで楽しい。

エイラは谷に暮らすうち、独自の知恵を編み出していく。それまでいた一族とは違う火の 起こし方だったり、髪を後ろで編みこんでみたり、馬に乗って狩をすること、捕った獲物 を馬で運ぶ方法だったり・・・・・・エイラの独創性には、ただただ驚いてしまう。
最初は狩についていくだけだったウィニーや、ベビーもいつしか狩の仲間のような存在に なり、協力して獲物を仕留めていく場面なんかすごいと思う。狩の名人へと成長していく 動物たちの変化も読みどころの一つです。

→著者別[海外小説]
→ジャンル別[SF・ファンタジー・ホラー]
→テーマ別[壮大なスケール]


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野生馬の谷 (下) エイラ 地上の旅人(4)/ジーン・アウル 著


エイラとジョンダラーはついに運命的な出会いを果たす。ずっと一人でいたエイラにとっ て、ジョンダラーの存在はとても大きなもの。一人でなんでもできてもやっぱり仲間が欲 しい、話相手が欲しい、切実に待ち焦がれていたのだ。

言葉の違いからなかなか繋がりあえない二人。何しろエイラは身振りで話す一族の元にい たから、その慣習に基づいてひたすら合図を待っているのだ。
好意を持っていても、それを伝える言葉がわからない。自分の生い立ちを話したくてもど こから伝えたらいいかわからない。こんなにも近くにいるのに、胸の内から今にも溢れ出 しそうなのにどこにもぶつけられないもどかしさ。早く二人が近づけばいいのに、自由に 話せるようになればいいのにと強く思ったのです。

印象的だったのは、ジョンダラーからみたエイラの描写です。道具や服装も飾りがなく質 素にみえたこと、エイラはとても美しく魅力的な女性にみえたこと、エイラの一族の言葉 は、重い喉音で音をのみこんでいるように聴こえたこと。外側にはもっと広い世界がある ということが改めて感じられ、ジョンダラーの語る言葉が新鮮に移りました。

驚いたのが彼らからみたらエイラの一族は、「平頭」と呼ばれていて、人間ではないと思 われていたことです。獣の一種であって忌まわしい存在なのだと・・・・・・
二人でいるところに、突如現れたマムトイ族・・・・・・これから出会う同種の中でも、新たな 偏見や差別が待ち受けていそうな予感がします。

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マンモスハンター (上) エイラ 地上の旅人(5)/ジーン・アウル 著


ある日、出会った狩の一団に招き入れられたジョンダラーとエイラ。この一族に受け入れ られるのか、不安を感じる一方で期待もあった。マムトイ族と言われるその人々をしげし げと眺めるエイラ。自分とよく似ている・・・果たしてマムトイ族とはどのような人々なの か、新たな生活の始まりです。

最初は不安を感じていたものの、マムトイ族のおおらかで明るい性格に徐々に溶け込んで いく。この人達はみな口で言葉を話している。男性も料理をするし、女性も狩をする。 それまで暮らしていた洞穴とは異なる住居に纏っている衣服。そしてなにより驚くのが平 頭(エイラは氏族と呼んでいる)が産んだ霊のまじりあった子が一緒に暮らしているとい うこと。ライラグというその少年をみてエイラは、一族の元に置いてきた息子ダルクを思 い出し胸を痛める。

エイラを驚愕の眼差しでみつめる人々。なんといってもエイラは馬を巧みに操り狩をする し、薬師としても長けている。生い立ちも謎めいていることばかりだ。けれど真実をあり のままに話し、受け入れられたいと願うエイラのひたむきな姿が眩しく映ります。

エイラをうっとりと眺める褐色の肌を持つラネクやダヌーグ。そんな二人の様子に激しく 嫉妬するジョンダラー。冷静で頭が良いだけでなく、ふところが深くユーモアもある長の タルート。豊富な知識を持ち遠見の能力を備えたマムートなど魅力的な人物がたくさん登 場します。

みんなに好かれ平穏に過ぎていくと思われたが、ここでもやはり反感を持ち敵意をぶつけ てくる人間もいて、新たな波紋を巻き起こす予感に包まれながら中巻へと続く。

→著者別[海外小説]
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マンモスハンター (中) エイラ 地上の旅人(6)/ジーン・アウル 著


一族の彫り師ラネクとジョンダラーとの間で揺れ動くエイラ。このラネクはジョンダラー とはまったく対照的で気さくで思いやりもあり、情熱的なのである。
「きみを愛している」「きみが欲しい」こんなセリフを熱く燃えるような瞳で囁かれたら 誰だってクラクラきてしまいそう。積極的になんの隠し立てもせず、ストレートに想いを ぶつけてくるラネクの存在が胸にズキンと響きます。

そんな様子を眺め、嫉妬と不安に襲われるジョンダラー。すっかり笑顔も消え、やつれて いくジョンダラーがあわれでもあり、痛々しくもあります。エイラの気持ちは今でも変わ りないのに、ちょっとした誤解や思い込みからどんどんすれ違い離れていく二人。もっと 話をして気持ちを確かめ合えばいいのに、傍目には誰からみても相思相愛に移るのに、た だ相手に求められるのを待つばかりなので何も起こらない。とてももどかしい思いでいっ ぱいになりました。

マムトイ族の人々の生活様式は、それまでエイラが暮らしてきた氏族の人たちとも、ジョ ンダラーの故郷ゼランドニー族の人たちとも異なり、興味深いことがいっぱいです。
蒸し風呂、洋服を飾った丸い数珠玉、巻貝をつなぎあわせた首飾り、鮮やかな色合いの染 物、建物を作るための工夫された道具の数々。ほんの数ヶ月いただけなのに、もっと長い 年月をここで過ごし、細部までみてきたような気がしてしまうほど描写が丁寧でリアルで す。

狼の赤ん坊ウルフも加わり和気藹々と暮らす人々。この巻では他の人々の苦悩や悲しみも 描かれています。口やかましく気難しいクロジーも、不満を言い他人と衝突してばかりの フレベクさえも心の内を知るにつれ、幸せになって欲しいと思うようになりました。

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マンモスハンター(下) エイラ 地上の旅人(7) /ジーン・アウル 著


今回は、「春のまつり」「夏のつどい」「マンモス狩り」「縁結びの儀」などの行事が 盛り込まれています。ライオン簇を出発し、すべてのマムトイ族が集合するのだけど、出 てくる登場人物が数多く、目が回りそうになる。異なる生活様式、住居、装飾品など、離 れて暮らす他の簇の人達には、また違った生活があり、出てくる光景にただただ感心して しまう。

同じマムトイ族であるマンモス簇や狼ノ簇の人々は、馬に乗ったエイラに驚く。エイラが 自ら出目を公言することによって、混乱し戸惑う人々。どうなることかとハラハラしてい たのだけど、ライオン簇の人たちが、すぐさま駆け寄り、エイラに味方する場面は感動的 です。エイラは本当に受け入れられたんだなと暖かい気持ちになり、最初に出会う異人が ライオン簇の人でよかったなと改めて思いました。

言い伝えや慣わしなど、ずっと信じてきたものを根本から変えるのは大変なこと。エイラ の存在は、それまでの生活をくつがえすような、脅威なものとして映っても不思議はあり ません。今まで誰もやらなかったことを誰かが始めてやった時には、偏見を持つ人は必ず いると思うし、前例のなかったことは受け入れがたい。先入観を持ち、保守的に生きる人 がいる一方で、自身の信念を貫き通す人もいる。色々な紆余曲折を経て、少しずつ意識が 変わり、繋がっていく「未来」があるのだなぁと思った。

エイラとジョンダラーの関係はますますもつれ、離れていくばかり。終盤に入り、やっと 気持ちを通じ合わせ、愛を確かめ合う二人。魅力的なジョンダラーにも、克服しなければ ならない壁があった。長い苦悩からスッと抜け出せた時、ジョンダラーが一段と大きくみ えた。

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平原の旅 (上) エイラ 地上の旅人(8)/ジーン・アウル 著


愛を確かめあったエイラとジョンダラーは、マムトイ族に別れを告げ、ジョンダラーの故 郷へと旅立つ。遥か西方にある故郷はとてつもなく遠く、急いでも一年はかかる道のり。 大きな荷物に、オオカミ、馬2頭を連れての旅は容易ではない。途中、川を渡り、森を抜け、険しい丘陸地、切り立った岩壁を過ぎた頃、シャラムドイ族の簇に辿り着く。

広大な台地に緑豊かな平原。景色の移り変わりが丁寧に描かれています。前に進むに連れ、気候や温度も変わり、それに合わせて、生息する植物や動物たちも異なっている。ムクドリやバッタの大群に悩まされたり、激しい雷雨で別の場所に避難したり、旅をしている気分を充分に堪能できます。

印象に残ったのは、夏のうだるような暑さ。ブヨや蚊の大群が肌を刺し、体中が赤く腫れてしまったこと。その後、川に飛び込んだ時の気持ちよさ。朝起きた時の空気の冷たさで夏の終わりを感じたこと。みたことのない珍しい動物や地形など、いくつもの場面が生き生きとしています。

寂しかったのは、エイラとジョンダラーをみかけた人々は、みんなどこかに逃げたり隠れたりしてしまったこと。馬の上に人間が乗り、オオカミと歩く二人は、やはりどこに行っても奇妙で怖がられてしまうようです。

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