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山田詠美作品

蝶々の纏足 放課後の音符
晩年の子供 120% coool
色彩の息子 24・7

蝶々の纏足/山田詠美 著


女同士の友情は、この本の登場人物のように複雑で、大人のそれと変わらないよ うに思う。嫉妬もするし、媚を売ったり、足を引っ張り合ったり、弱いものを自分の支 配下においたり。それでも、その年頃の恋なんかより、友情の結びつきは深いのかもしれない。

主人公である瞳美は、少女でありながら女である。男の身体が欲しいという欲望 を素直に現す。個性があり、自分の世界を持っている。 孤独になることを恐れず、これほどまでに自分の道をまっしぐらにいける彼女が 魅力的だと思う。

大人達からみたら、こんな彼女よりも、えり子のほうがきっと魅力的にみえてし まうんだと思う。それは扱いやすいとか、従順だとか、子供らしいとか。
大人からみて、いい子は子供からみるとまったく違った人間だったりする。 いい子は、いい子を演じているから。何を望んでいるかがわかっているから、子供 らしい発言をする。無邪気に振舞う。

残酷さや、何かを失うということ、大人へと飛躍していく様子に、自分の過去を重ね ていくと色々なことを思い出してしまう。
多感な少女時代の胸にチクチクと痛む出来事、閉塞感に息詰まる思い、抜け出したいけれど、何に向かっていったらいいのかわからない苛立ち。
この本を読むと、自分の中の迷いからほんのちょっと違うところにいけそうな気がする。
何かに悩んでいる人、早く大人になりたい人には、ぜひ読んで欲しい1冊です。

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[青春・学園小説]


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放課後の音符/山田詠美 著


まだ恋をしていない人、片思いの人、早く大人になりたい人、そんな人達におすすめの本です。
恋を知らなかった頃は、小説やドラマの中の恋愛しか思い浮かべることができなかった。
でも、この小説はそんな作られたお話なんかじゃなくて、身近な友達のお話を聞いてるみたい。 恋をして、どんどんキレイになっていく友達を側でみているみたい。

失恋した時には悔しい、悲しい、孤独、そういうものを胸いっぱいに甘受してこそ、その人を魅力的にする。
もっと話したい、触れてみたいのに遠くからみてるだけの片思い。その人のことで胸がキュンとなって、他の事なんて何も考えられなくなる。 それはとってもキラキラした素敵な時間だということを思い出させてくれた。
恋をしていても、切なくなったり、もどかしかったり、背伸びするけれど、やっぱり大人への階段はまだ遠くって……
ピュアで真っ直ぐな気持ちって素敵だなぁ。
本当の魅力的な女性とは何かを教えてくれる1冊です。

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[恋愛小説]
→テーマ別[乙女のための本]


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晩年の子供/山田詠美 著


子供時代、たくさんのものを見つけ、失い、憂愁を感じていた。絶望も希望も記憶として 残っているのだけど、当時の自分の中では無自覚だったと思う。この小説は、子供の頃の 心の襞を、繊細に紡いだ8つの短編集です。

私の小さい頃を振り返っても、楽しい思い出よりも、言葉では説明できない感情が渦巻い ていたように思う。空虚とかせつないとかいう言葉も知らなかった年頃。心を揺らすもの の正体が何であるのか、じっと目を凝らしみつめるのだけど、取り出そうとすると色んな ものが絡まり、収拾つかなくなるのだ。

著者は子供の頃の記憶を子供の目線で捉えている。どのお話も私が経験したわけではない のだけれど、この感覚は理解できる。忘れ去られた記憶のフタが次々に開き、胸がいっぱ いになった。懐かしいのとは違う。胸がチクチクと痛むような息苦しさを伴うものなのだ。

この頃の私は今よりもっと感覚的に生きていたような気がする。見るもの、聴くものをめ いっぱい吸収し、距離を置いたり排除する術を知らなかった私はとても無防備だ。大人に とっては簡単に通り抜けられるハードルでも、やはり何度も躓いてしまう。そんな時代が あったことを私は忘れたくないと思う。

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[一般小説]
→テーマ別[子供の情景]


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120% coool/山田詠美 著


9つの愛の形を描いた短編集です。ひとつひとつの場面、一瞬の細やかな感情の動きが美 しく描かれていてうっとりしてしまう。甘美なんだけど、でも時に胸を締め付ける、嫉妬 もするし、意地悪な自分を発見したりもする。そして微熱を伴う時間の後には、感傷が待 ち受けている。

彼との空間は色々なものを交換しあってるのだと思う。瞳を交し合うだけでも、肌を寄せ 合うだけでも、みえない何かを受け取ったり、与えたりしているものだと思う。
密度の濃い空気、みつめる視線から流れてくる気持ち、好きな人との時間はセリフなんか なくても充分に官能的だ。

著者の文章は何気ない出来事もロマンティックに彩られていて、キレイな表現がたくさん 散りばめられています。
「瞳から思いがこぼれ落ちる」
「あなたの瞳、おしゃべり過ぎるのよ」
これらは一番大好きな『雨の化石』に出てきた言葉です。

詩的で静謐な世界は素晴らしく、恋をしていた時の色々な気持ちを想い出させてくれる。 何気ない出来事であっても、キラキラした宝石のように眩しく感じられ、大切な人がより いっそう愛おしくなりました。

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[恋愛小説]


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色彩の息子/山田詠美 著


しっとりとぼくの体にまとわりつく真っ赤な声の染み(赤)。夜明けの孤独を泳ぐようにかきわける青白い顔の女(青)。病んで忌まわしい白い心の病室に、鍵をかけ封印してきた女(白)。心の奥底に刻印されてしまった劣等感という名の黒子(黒)―。妄想、孤独、虚栄、倒錯、愛憎、嫉妬、再生…。金赤青紫白緑橙黄灰茶黒銀に偏光しながら、心のカンヴァスを妖しく彩る12色の短編タペストリー。(「BOOK」データベースより)

どの短編の中にも、愛憎、嫉妬、虚栄などのネガティブな感情が渦巻いていて、後味があまりよくない。どこかに救いがあればいいのだけど、ハッピーな結末はない。深い闇に気づいてしまった。抑え込まれたエネルギーが最後に噴出して壊れてしまった。こんなラストを迎えるこの小説は、色のイメージが濃厚である。

短編ごとに、話の内容にあった色紙が挟み込まれていて、自分の中で想像する世界観が色をみることによって、より明確に刻印されていく。その中でも好きなのは、『声の血』『病室の皮』『蜘蛛の指輪』です。

病んでいく精神、膨れ上がったストレス、息苦しいほどの倦怠。経験したことのない感情なのに、いつのまにか、主人公の内側を泳いでいる私がいる。気だるくて、重くて自由に身動きできない。半分、夢をみながら幻想の中を漂っているみたい。

心のひだの描き方が実に巧みで、ドキリとする瞬間がいくつもある。うごめいているそれは、生々しくてリアルで痛いぐらいに真っ直ぐに届く。パカンとフタを開けて飛び立ったそれは、色彩となって私の心に広がる。

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[一般小説]
→テーマ別[モチーフ]


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24・7/山田詠美 著


1日に24時間、1週間で7日間、片時も離れない恋人同士の言葉。指先に宿る神経、涙を張らせる瞳、声を吸い込む耳…。恋をする体のための濃密な9話。(「BOOK」データベースより)

恋よりももっと濃密な大人の情事。潤んだ瞳、火照った肌、吸い込まれそうな口づけ。何も言わなくとも愛の囁きは無言の内に交わされている。理性などあっと言う間に吹き飛び、欲望が溢れ出す瞬間。指の戯れ、窓ガラスを曇らせるほどの熱い吐息、胸の中で包み込まれる優しさも一瞬一瞬が愛おしく恋をしたくなってくる。

「恋」を振り返るとき、断片は思い出せても映画の一齣のようには繋がらない。目が覚めるとすぐに消えてしまう夢のように短く儚げなものだから。この作品は説明のつかない感情や心の揺らぎを繊細に美しく描いている。掴み取ろうとしてもすぐにこぼれてしまう揺らぎは大切なものだから、ゆっくりと味わいながら読んでいく。

表題作である『24・7』は一番リアルでぞっとする話だと思う。
初めは確かに恋から始まった。片時も離れられなくなり愛を育んでいるつもりだった。いつも心の真ん中に存在し、彼女のいない人生など考えられなくなって依存している。それなのに気づくと「愛」は無くなり「情」だけが残る。だんだん彼女の愛情が重くなり足枷となる。彼は精気を奪われ消耗し、彼女は奪った精気によって「生」を与えられている関係。

もしもこんな関係になってしまったなら、別れの時には身を切られるような痛みを伴うのではないだろうか。付き合っていったとしても、見えない所に亀裂が広がりいつか崩壊するのではないかと思う。そんな未来を予感させるラストが怖かった。

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[恋愛小説]


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