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恒川光太郎作品

夜市 雷の季節の終わりに
草祭

夜市/恒川光太郎 著


表題作の『夜市』と『風の古道』の2編がおさめられています。
『夜市』
妖怪たちによって開かれる夜市。そこに売っているのは奇妙なものばかり。
祐司は、自分の欲しいものと引き換えに弟を売った。罪悪感にさいなまれた祐司 は、数年後再び弟を買い戻すことを決意し、訪れるのだが……

祐司の犯してしまった過ち・時間は、もう決して取り戻せるものではありません。 欲望に負け売ってしまったもの、その後に襲ってくる激しい後悔。
人間の欲望や願いを叶えるものを売っている妖怪たち。弟と再び出会うことはでき るのか。

ホラーといっても、身の毛のよだつようなホラーとは違います。
美しく幻想的なその世界は、誰にでもつながっている。匂い・予感・空気でもうすぐ 現れる気配を感じるのだ。どこにでも、私たちの歩いている道にだってその空間へ と通じる道があるような気がしてしまう。
怖いけれど思わず覗き込んでしまうような、ふと気づくと足を踏み入れてしまうよう な密やかな怖さがあるのです。

『風の古道』は、ふとしたところから、人間は足を踏み入れてはならない神の道に 迷い込んでしまう話。
いくら歩いても、抜け出せない遠い出口。練り歩く死者たち。そこで起こるある事件。
旅行者であるレンの話は味わい深く、その母親、恋人の話にまで遡ります。
ラストに近づく頃には、異質な世界なのにどっぷりと馴染んでしまっていた。
長い長い旅をして、やっと故郷に帰ってきたような読後感。

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[SF・ファンタジー・ホラー]
→テーマ別[夏休み]


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雷の季節の終わりに/恒川光太郎 著


地図にはどこにもない小さな町・穏で暮らす少年・賢也。穏には春夏秋冬の他にもう一つ 雷季と呼ばれる季節があった。その季節には鬼が歩き回り人を攫っていくという。賢也の 姉も雷季に突然姿を消した。それと同時に賢也は「風わいわい」にとり憑かれてしまう。

異界である穏の暮らしぶりや風景は、現代とは違いゆったりと和やかな雰囲気です。友達 もでき平穏に過ごしていたのに、ある秘密を知り、穏を追われることになる。
墓町、闇番、獅子野、風霊鳥など不思議なものが数々登場しますが、すんなりと馴染めて しまう。美しい文体にイメージがぱっと広がり幻想的な空間が浮かび上がってくるのです。

物語は賢也を中心に「ナギヒサ」「茜」「トバムネキ」「風霊鳥」など様々な人の視点で 描かれている。バラバラな人物たちがいったいどうやって繋がっていくのか。過去や現代、 異世界を交互に行き来し、すべてが繋がった時、この不思議な世界に奥行きが感じられる ことでしょう。

空間がグラグラ揺れ、何かがヒタヒタと動く感触。自分の中にもう一つの存在が住み、同 じものをみている感覚。風霊鳥が少年の内を覗いたときの神秘的な情景描写。
まるで自分が内側に入って同じことを体験しているかのようにゾクゾクします。怖いのだ けど吸い込まれてしまう。この先何が待ち受けているのか、もっと覗きたい、もっと感じ たい、そう思いながら夢中になって読んだ。

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[SF・ファンタジー・ホラー]


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草祭/恒川光太郎 著


たとえば、苔むして古びた水路の先、住宅街にひしめく路地のつきあたり。理由も分らず たどりつく、この世界のひとつ奥にある美しい町“美奥”。母親から無理心中を強いられ た少年、いじめの標的にされた少女、壮絶な結婚生活の終焉をむかえた女…。ふとした瞬 間迷い込み、その土地に染みこんだ深い因果に触れた者だけが知る、生きる不思議、死ぬ 不思議。神妙な命の流転を描く、圧倒的傑作。 (「BOOK」データベースより)

石畳の小道、古い木造家屋、出てくる風景は和風で懐かしい。どこにでもありそうな田舎 の町並みなので、随分昔、行ったことがあるような気がしてくる。そんな中に、突如現れ る「美奥」と呼ばれる美しい街。妖しく、不吉で、謎めいていて、ずっといちゃいけない と思いながらも、ついズルズルと長居したくなる不思議な魅力を持っている。

『天化の宿』は、今まで読んだ中で一番変わっている。カードゲームをやっているだけな のに、膨大な思考の海を泳いできたような疲れが残るし、遠くまで旅をしてきたような気 もするのです。「天化」と向かい合うたび、緊張感が走り、飛び込んでくる鮮やかな光景 に魅了されたのでした。

『朝の朧町』は、ある人物が作った創作の街。でも、招待された人物の影響を受け、とこ ろどころ形を変える。嫌な人ではなく、自分の逢いたい人や、好きな過去がみられたらい いのにと思いました。

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[SF・ファンタジー・ホラー]


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