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朱川湊人作品

花まんま あした咲く蕾

花まんま/朱川湊人 著


40年代の大阪の下町を舞台にした作品です。
40年代を知らない私でも、懐かしさが込み上げてきて、いつのまにか子供時代に帰ってしまいました。
ジャンルでいうと、ホラーとかファンタジーになると思いますが、6つの短編のど れもが、同じ感覚を味わった事があり、子供の目線で大人をみている自分に気がつ きます。

誰にもいっても信じてもらえないけれど、心にしまっておきたい宝物のような思い出。 それは楽しいのとは違うけれど、胸がキュっと痛み切なくなるような不思議な体験。
大切な友達を傷つけてしまった時の激しい後悔。周りに流されて、いつのまにか自分 もいじめに加担している。友達の悲しい顔。そのときに初めて自分は残酷なことを していると気づいたり。

色々な意味でまだ何も形成されていない柔軟だった子供時代。
感覚が研ぎ澄まされ、たくさんの情報が入り込んでくるのにそれらを処理し、編集 し、表現する言葉を持たなかった。しっかりとした軸ができあがる前には、 ここでドーンと構え1人佇むこともできない。儚くもろい存在だ。
どちらが正しい、どちらが適切か、どうしたいのか、考える以前に、争いをさけ、 強いほうについたり。敵をつくらないようにただそれだけを考え行動する。
中間にいてもよかったのに。
今、大人になり、自我を持った私は、そんな子供時代があり、今があるのだなぁと しみじみ思うのだ。

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[SF・ファンタジー・ホラー]
→テーマ別[異国情緒][子供の情景]


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あした咲く蕾/朱川湊人 著


時代は昭和、ノスタルジックな町並みと優しさ溢れる7つの短編集です。
優しさといっても、深い愛情とは違い、爽やかな風が、スーッっと通り過ぎていくような ちょっとした思いやり、何のまじりけもない好意からくるものです。

全編を通して不思議な出来事が起こるのですが、『カンカン軒怪異譚』、『空のひと』、 『虹とのら犬』は、想いが強ければ、そういうことも起こりうると思います。そんな誰か の想いに触れ、時を経ても変わらず心に残っている想い出って素敵ですね。それがどん な小さな事だったとしても、自分にとってはかけがえのもの。温かい気持ちになれる素敵 な本です。

冷たい人もいるけれど、悪い人ばかりじゃなくて、静かに愛情を注いでくれる人もいる。
『湯呑の月』は、叔母と女の子の交流がほのぼのとしていて好き。叔母さんの深い愛情が 伝わってきて、こんな身近にお姉さんのような存在がいる女の子が羨ましく思えました。
『虹とのら犬』は、一番さりげなくって、誰にでもありそうな話だと思います。誰かに必 要とされている実感――たったそれだけで人はどんなに救われることでしょう。人と人と の繋がりが美しく彼女の眩しい笑顔が印象的です。

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[SF・ファンタジー・ホラー]


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