末枯れの花守り | アイ・アム |
花に想いを託す人、自分を花にたとえ、美しいままに永遠でいられたらと願う人、花
で出会った人をいつまでも待ち続ける人。
そんな人達の欲や弱さにつけこむ永世姫、常世姫と名乗る姉妹。
彼女らは艶やかな着物姿で突然現れる。
長い睫、吸い込まれるような瞳、この世のものとは思えない妖艶な姿。
現代とはかけ離れた時代を思わせる言い回しや衣装。
舞台の役者が目の前に現れ、それを眺めているみたい。
袖を振るたびにする花の香りや、美しさの中にときおりみせる妖しげな表情が目に
浮かぶようです。
彼女らは言う。1番美しい時を封じ、永遠の花に設えると。
そしてもう1人。花の守護を司る花守りの青葉時実。彼はいったい何者なのか。
幻想的なだけじゃなく、セリフの一つ一つが魅力的でもあります。
特に最初にでてくる『朝顔』では
「滅びは…優しい。花開いて萎れる、その流れる時間の中でこそ、また何かが変わ
り、生を享けることができる」
「闇があってこそ光が眩しく感じられるのですから」
とても深い言葉。じっとりと胸に響きます。
→著者別[国内小説]
→ジャンル別[SF・ファンタジー・ホラー]
→テーマ別[モチーフ]
私は誰?―円柱形のボディに特殊ラバーの腕。ホスピス病院で目覚めたミキは、プ ログラミングされた高度な知識と技術で、難病の子供や末期癌患者たちを介護す べく活躍を始めた。生と死が隣り合わせの現場で、激しく揺れる心、そしてなぜか 甦る奇妙な記憶。私は本当にロボットなの?「自分探し」をするミキが、“人間とは何 か”を問う、感涙の近未来小説誕生。(裏表紙より)
患者と触れ合ううちに甦る不可思議な記憶。それは、プログラミングされた知識で
はなく、本当に経験したかのように、ぼんやりと浮かび上がってくる。
私は、ロボットではないの?いったい誰?
思い出す記憶の断片の数々。思いをめぐらし、自分探しを始めるミキ。
完璧なロボットとは何かが違う。本物の人間のように「私」は感じることができな
い。人間とロボットの狭間で揺れる気持ちが見事に描かれています。
魅力的だったのは、患者にかける言葉が、いかにもマニュアルにありそうな言葉
や、優等生ぶった言葉ではなく、だんだん人間らしい発言が飛び出してくるところ。
患者さんに「頑張りましょう」とか、「諦めちゃいけません」なんて言ったら、追い詰
めちゃうこともあるのですよね。それよりも共感が大事。
「人間の本来の姿」とか「本質」とか、「何が幸せなことなのか」とか、そういうことを
考えさせられるお話なのでした。
→著者別[国内小説]
→ジャンル別[SF・ファンタジー・ホラー]