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仙川環作品

聖母(ホスト・マザー) 感染
無言の旅人

聖母(ホスト・マザー)/仙川環 著


この本は、子宮頸ガンのため子宮を摘出し、子供を産めなくなった美沙子が代理 母を捜し求める物語です。
美沙子を筆頭に、その夫、美沙子の父、母、義理の妹や病院の医師たちまで、 様々な人物の考えや思いが交錯し、読んでいくうちに何が正しいのかわからなく なってしまうのです。
最初に美沙子の母が自分から、私が代理母になると志願し、それが叶わなかった 後、無言の圧力で、やらざるを得ない状況に追い詰められた義理の妹。舞台はさ らにインドにまで渡り、格安でできるということから試みるのだが……

神を冒涜するだとか、エゴだとか批判的な意見もある中、医師はそういう考えもあ っていい。だけど子供が欲しい人に諦めろと強制してもいけないという。
興味深かったのが、病院の院長と女医の考え方の違い。
院長は代理母となれるのは身内、あるいは金のためにどうしてもやらなきゃいけな い女性だといっている。女医は、それとは対照的に代理出産は命の贈り物でなけれ ばならない。一点の曇りもない心で志願した女性が代理母になるとき、贈り物と して成立するといっている。

何度も絶望し諦めかけ、それでもやっぱり子供が欲しくって、その姿は病的なほど 思いつめている。こんな人に子供のいる人とかが、子供のいない人生だっていい じゃないのといっても本人はますますみじめになるだろうし。
その辛さは当事者にしかわからないこと。無責任な正義を振りかざし他人がズケズ ケ踏み込むのはおかしい。理屈では割り切れないものの多さに気づかされます。
ラストには、美沙子の気持ちが大きく変わるのですが、それまでにはとても長いプ ロセスがあり、読みながら身近な問題として真に迫ってくるのです。
あなたならどうする?と常に問いかけられているような緊張感があり、色々なこと を考えさせられるのです。

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[ミステリー・サスペンス]
→テーマ別[医療サスペンス]


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感染/仙川環 著


ウィルス研究医・仲沢葉月は、ある晩、未来を嘱望されている外科医の夫・啓介と前妻と の間の子が誘拐されたという連絡を受ける。幼子は焼死体で発見されるという最悪の事件 となったにもかかわらず、啓介は女からの呼び出しに出かけていったきり音信不通。痛み 戸惑う気持ちで夫の行方を捜すうち、彼女は続発する幼児誘拐殺人事件の意外な共通点 と、医学界を揺るがす危険な策謀に辿り着く―。医学ジャーナリストが描く、迫真の医療 サスペンス!第一回小学館文庫小説賞受賞作。(裏表紙より)

臓器移植をテーマにした医学小説なのだけど、内容は決して難しくありません。スピード 感のある文体に次々と起こる謎。真実を探り当てようとするのだけど、一向に進展しない。 悩み、時に押しつぶされそうになりながらも、本当のことを知りたいと願う葉月の姿が重 くのしかかってきます。

側にいても、心ここに在らずの夫。何か隠しているようで探ろうとするのだけど、葉月を 遠ざけ寄せ付けない。めまぐるしく起こる事件を追う中で、常にこの夫の謎めいた表情や言 動が気にかかるのだ。そしてその内に秘めた想いを知った時には、やるせない気持ちでいっぱい になりました。

さらりと読めてしまうけれど、葉月も夫も様々な葛藤があったのですよね。あまり馴染 みのなかった臓器移植というテーマがリアリティーを持ったものに変わり、本当にあり そうかもと思わせてくれた。

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[ミステリー・サスペンス]
→テーマ別[医療サスペンス]


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無言の旅人/仙川環 著


人は誰のために生き、誰のために死ぬのか―。交通事故で意識不明になった三島耕一の自 宅から見つかった尊厳死の要望書。希望を叶えるべきか否か、婚約者、家族、医者は激し く動揺する。しかし、苦渋の選択を強いられた周囲の思いもむなしく、耕一は突然息を引 き取った。殺人か、医療ミスか?原因究明に乗り出した婚約者が掴んだ不可解な事実とは。 (「BOOK」データベースより)

耕一からは尊厳死について話すのを一切聞いたことがない。なぜそんな重要なことを一言 も相談せずに決めてしまったのか、自分は信頼されてなかったのか、周囲の戸惑いや、心 の葛藤がリアルに描かれています。
なんとしてでも耕一を生かしたい母親、冷静だけど自分では判断が下せない父親など、受 け止め方はみんな違います。悲痛な叫びが聞こえてきそうな文面に、胸が締め付けられる 思いです。

理性の部分では理解できても、どうしても感情の部分で受け入れられない。私がそういう 事態に直面したとしても、同じように迷うと思う。揺れる思いが痛いぐらいに伝わってき て、そのたび私の心の中もぐちゃぐちゃに入り乱れ、考えれば考えるほど答えがでなくな ってしまうのです。

自分の決断により、相手を死なせてしまうことになる。それはとても勇気のいることだと 思う。そして、心から穏やかに見送るなんてことはできなくて、ずっともやもやしたもの を抱えてしまうかもしれない。
生きているという重さ、尊い死とは何か、そういうものを深く考えさせられた。

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[ミステリー・サスペンス]
→テーマ別[医療サスペンス]


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