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三浦しをん作品

秘密の花園

秘密の花園/三浦しをん 著


私は、なにをしているんだろう。どうしたら「私」でいられるんだろう?カトリック系女子高校に通う、三人の少女、那由多、淑子、翠。性格の異なる三人の「私」は、家族、学校、男たちの中にあって、それぞれが遠いはるかを、しずかに深くみつめている。「秘めごと」をかかえる彼女たちの微笑の裏側の自由。甘やかな痛みの底に眠る潔くも強靱な魂。自分を生き抜いていくために「私」が求めていたことは―。記念碑的青春小説。 (「BOOK」データベースより)

女子高での友達同士の微妙な距離感、閉塞感、生ぬるい退屈な空気とか、世界観がとても出ていると思う。もやもやした、言葉では言い表せない感情を、これほど明確に、克明に表現出来てしまう著者がすごいと思った。

本文にあった
「ぬるま湯によって温められることも冷まされることもない、自分だけの温度をずっと保っている。だから私は彼女たちが気になって仕方ないのかもしれない」
という一文が印象的。

変わらない日常だけど、心の中はグッと濃密で、息苦しくなるほどの重いものを抱えていた。少女は複雑だ。まっすぐで頑なで、どこまでも思いつめてしまう。
少女たちの闇は、飲み込まれそうなほどに大きく、逃げ道がない。どんなにもがいても、抜け出せない暗い闇の底。3人の少女たちは、それぞれにタイプが違うけれど、自分と重なる部分が多く、胸が痛んだ。

繊細で、今にも壊れてしまいそうな危うさ。それとは相対するマグマのような激情。内に秘めているうちはいいが、ひとたび噴出すると狂気にもなる。想像もつかない行動にでることもある。

ずっと向こうにみえる一筋の光。だが、ここに辿り着くまでの道のりがどれほど長いことか。周りの人が手を差し伸べてもどうにもならない。自分で歩くしかないのだ。長いトンネルから抜け出せた時、世界の限りない広さを知る。後に残る窮屈な抜け殻。一回り大きくなった彼女は、もう同じことではつまづかない。

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[青春・学園小説]
→テーマ別[乙女のための本]


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