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三田誠広作品

いちご同盟 永遠の放課後

いちご同盟/三田誠広 著


中学三年生の良一は、同級生の野球部のエース・徹也を通じて、重症の腫瘍で入院中の少 女・直美を知る。徹也は対抗試合に全力を尽くして直美を力づけ、良一もよい話し相手に なって彼女を慰める。ある日、直美が突然良一に言った。「あたしと、心中しない?」ガ ラス細工のように繊細な少年の日の恋愛と友情、生と死をリリカルに描いた長篇。 (裏表紙より)

中学3年というと、実に複雑で説明のつかない苛立ちや戸惑いが多かったような気がする。 この本に出てくる良一も、進路や母との関係で悩んでいる。
良一からみた世界は別の空間のようで馴染めない。違和感を持ちながらそれを全身で受け 止めている。そしてじっと考える。 無口だけれど、その心の内はジェットコースターのように大きく揺れ、答えを探し求めて いる。

直美をお見舞いに行ったのに、一言もしゃべらない場面では、感情の波が克明に伝わって くる。彼の思考の中に溶け込んでしまったかのよう。
重く立ち込める暗い影。死という言葉が常に付きまとっていて、飲み込まれそうな危うさ。

いつからみんな「自分」になれたのだろう。彼の姿は自分自身と重なり、胸の奥がひりひ りと痛んでくる。この頃の私は、大人になった姿や未来なんてまったく想像できず遠かっ た。いま現在を、一分一秒を身を切るように過ごしていた。

まだ何者にもなれなくて、色を持たず透明感のある彼。そんな彼がまっさらに見え、周り の景色はひどく濁っているように思えた。
青春時代の自分に出逢えるオススメの本です。

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[青春・学園小説]
→テーマ別[詩的な小説]


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永遠の放課後/三田誠広 著


大学生の「ぼく」は、中学の頃から親友の恋人・紗英に想いを寄せていた。しかし、親友を傷つけたくなくて、気持ちを告げることができない。そんな中、プロの歌手だった父譲りの才能を買われ、活動休止中の人気バンドのボーカルにスカウトされる。そして、ライブに紗英を招待した夜、恋は思わぬ方向へと動き始めた―。友情と恋。「ぼく」が最後に選んだものは?文庫書き下ろし、胸を打つ青春小説。 (「BOOK」データベースより)

「ぼく」「杉田」「紗英」の三角関係を軸に物語は進んでいくけれど、ドロドロすることはない。むしろお互いが気を使い、優しすぎるばかりにもつれていっているという印象。紗英に想いを告げたなら杉田から紗英を奪うことになってしまう。でも、紗英のことが好きで好きでたまらない。溢れた想いを押し隠し、友達として振舞おうとするピュアな「ぼく」に胸が打たれた。

この作品では、三角関係だけでなく、誰もが通過するであろう進路への迷い、将来への不安も描かれているので共感できると思う。特に杉田が「ぼく」をどう捉え、何を思ったのかが行間から読み取れる。

決められたレールの上を歩きたくない。自分の道は自分で作っていきたい。自分にも何かやれるに違いない。しかしある時、自分の能力に限界があることを知る。そして自分がとても小さくなったように思えてくる。初めての人生の挫折、そんなとき、友達の成功を知らされたなら……
杉田の心情が自分と重なり、本当は言いたかったけど語られなかったセリフまで聞こえてくるようです。

将来の自分の姿が思い描けなくて、未来がとてつもなく遠かったあの頃。もがいても、どこにも出口なんかなくて、一生浮き上がれないんじゃないかと思ってた。静かで研ぎ澄まされたこの世界観は、過ぎし日の過去を昨日のことのように思い出させてくれる。

様々な人々の思いに触れ、少しずつ気持ちがほぐれていく「ぼく」
いくつもの優しさや愛がひとつに収束し「飛躍」という見事な結晶を奏でている。爽やかで透明感のある素敵な作品です。

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[青春・学園小説]


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