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石野晶作品

月のさなぎ

月のさなぎ/石野晶 著


森の中の学園に隔離されて育った、性別のない子どもたち。成人するにつれ性別が確定し 、ひとり、またひとりと巣立っていく。年に一度の降誕祭を前に「学園の貴公子」と称さ れる薄荷は、外界から侵入してきた少年と恋に落ちた。森への逃避行、フラッシュバック する記憶。17歳の身体と心は、意思とうらはらに変わりはじめる…。第22回日本ファンタ ジーノベル大賞優秀賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

外界から閉ざされ、深い森の奥に佇む全寮制の学園。教歌を唄い、「月の大姉様」を崇め、 お祈りする。その中で暮らす生徒たちは、「男性になりたい」あるいは「女性になりたい」 という希望を胸に、日々生活する。

大人になるまで自分の性別がわからないことは不安だと思う。好きな人ができても、いつ か性別が確定されるとき、「異性」になるとは限らない。単調で窮屈で退屈な毎日。外へ の憧れもあるけれど恐れもある。彼女たちの成長していく姿や心の移ろいが、繊細でキレ イな言葉で綴られていて、とても雰囲気のある素敵な作品。

美しいと思ったのは、教歌で「小麦」と「空」が合唱するシーン。歌声の素晴らしさを文 字で表現するのは難しいと思うのに、こんな描写の仕方があったなんて。楽器の音色を聴 いているみたいに、ひとつだけでなくいくつもの音が響きあい、時に強く、時に弱く奏で るハーモニーがこちらにまで響いてくるようです。

学園の中だけで暮らす彼女たちは穢れを知らない。誰かに恋をし、ただその人の側にいた い。守りたいと思った。その気持ちのなんと清らかなことでしょう。そして本物の恋を知 った後の、苦さや痛みもしっかりと描かれていて、それでも前を向き歩いて行こうとする 彼女たちが眩しく映りました。

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[SF・ファンタジー・ホラー]


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