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橋本紡作品

九つの、物語

九つの、物語/橋本紡 著


2年前に死んだはずの兄、禎文がゆきなの前に現れた。 なぜなのか、不思議に思いながらも生前のように仲良く暮らす。
禎文はなぜ現れたのか、何か思い残したことがあるのか、何かを伝えたかったのか。 禎文が、ゆきなに残した言葉とは。 この最後の言葉を読んだ時、禎文の深い愛情、思いやりが伝わってきた。

なんでもない日常。毎日交わされる料理や読書の会話。そんな中に禎文の思いがた くさん込められている。 もう死んでしまっているわけだけど、一瞬一瞬をとても大事にしている。 それは、今を生きなきゃいけないということを、ゆきなにも、読者にも伝えてくれ ているような気がします。
ふんわりとした雪のようにスーッと人の心に寄り添う禎文。 ゆきなの抱えていることを優しく解きほぐしていく禎文。

ゆきなと彼氏の香月君の心がひとつになる瞬間。ほんのちょっとの幸せで心を揺ら したり、またひとつ香月君のことがわかってぐっと距離が近づいたような気がして いるゆきな。彼との待ち合わせで、すぐに駆け寄りたいけれど、このままもうちょ っと彼をみていたいゆきな。 繊細で瑞々しい描写がとっても素敵です。
こうやって知らないことを知って、色々経験してゆきなは少しずつ、大人になって いく。 ゆっくりと何かが変化して、一歩ずつ前に進み、歩き続ける。 立ち止まらず、歩き続けることの大切さを伝えたかったのですね。

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[SF・ファンタジー・ホラー]


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