アミターバ無量光明 | |
末期のガンを患って入院した老女。その娘小夜子と、娘婿である僧侶の慈雲を中
心に物語りは進んでいきます。
病状が悪化するにつれ、意識が現在と過去をいったりきたりする。
こちらの世界を離れると身体も自由に動き、亡き夫にあったり、不思議な女の子
に出会ったりする。
だんだんと、「今」という時間から離れている時間が多くなり、こちらの世界に
戻ってきても薄明かりの中に浮かんでいるような感覚。
もうすぐお迎えがきてるんじゃないだろうか。人は死んだらどうなるのか。
そういう老女に、慈雲は迷ったり悩んだりしながらも、一緒に考えている。
経典を鵜呑みにはせず、信じたいのだけどまだわからないという。
慈雲の語ったことは、確信できてはいないにしても、深みがあり感心させられる。
長い時間、死について考えてきた人じゃなきゃ語れないと思う。
老女の病床で、臨死体験だとか、遺体、火葬の話をする家族たち。けれど、決し
て、深刻にはならず、未知なる謎を、物理的に、肉体的に様々な角度から語って
います。
よくわからないながらも、老女は静かに自分の死を受け入れていくのです。
夢と現実が交錯する様子や、死後の世界がとても幻想的に描かれています。
死は、それほど怖いことでもなく、優しく、穏やかで、自然なこと。
柔らかい光に包まれて旅立っていくのが印象的でした。