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有吉玉青作品

風の牧場

風の牧場/有吉玉青 著


美名子の中学生から40歳にかけての日常が描かれています。
美名子の家庭は母子家庭で、ものごころつく前に離婚したため父の記憶がない。父がいないことを寂しいと思ったことはない。 ずっといなかったのだから。記憶がないから。
そんなある時、父がもうすでに亡くなっていることがわかります。
会いたいと思ったことはなかったけど、1年前に亡くなっていたことを知ら ずにいた自分を能天気に思えたり、涙ひとつでないことに困惑する。 母にも、父のことを聞いてみたいけど、言ってはいけないような気がして聞 けない。

美名子は色々な物事をちょっと難しく考えて過ぎているところがあるのです。
自分が経験したことのないことは、テレビや本の世界に置き換えて、そのイ メージとぜんぜん違うことに戸惑い、受け入れられません。
結婚し、ダンナになった大輔さんやその家族に対しても、上手くいっていて もこれでいいのだろうか、家族ってこんなものなのだろうかと悩んでいます。

劇的なことがあるわけでもなく、淡々と生活が綴られ、美名子の心の声がた くさん語られています。
もっと気楽に考えればいいのにとか、なんでそんな小さなことを悩んでいるん だろうと思いながら読んでいたのですが…… 答えは単純なことだったとしても、本人にとっては大きなことで、無意識に あれこれ考えてしまったりするのかもしれません。
回りの人達が、もっとこうすればと言っても、それを実感として理解し変わっ ていくのは時間がかかることで、自分で乗り越えるしかないのだなぁと思いました。

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[一般小説]


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