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雨森零作品

首飾り

首飾り/雨森零 著


秋(しゅう)と僕(れい)となな。二人の少年と一人の少女は、山あいの小学校分校で無 邪気に過ごしていた。思春期になり、成長するにつれ奇妙な三角関係へと変わっていく。 山、湖、森など豊かな自然描写と感情の揺らめきが美しい作品です。

木から落ちたこと、フクロウの巣をみつけたこと、ワカサギ釣りにいったこと、藁や雨の 匂い、子供の頃の想い出は鮮烈だ。「れい」の一人称で語られるこの本は、どれもが懐か しさを呼び覚ます彩りに溢れている。

「れい」は「秋」が大好きで、「秋」も「れい」が大好きで、「なな」はいつも二人を追 いかけていた。 夢中で駆けていたあの頃、瞳をキラキラと輝かせ、無心で蝶を追いかけたり、目に飛び込 むものを精一杯感受していたあの瞬間は忘れられない宝物だ。

特に「秋」のうれしくってたまらない瞳、全身で好きと表現するまっすぐなひたむきさが 好きです。
「秋」とずっと一緒にいたい、ずっとこのままでいたいと思う「れい」がいて。 いつもいじめられてて泣き虫の「なな」もすべてが愛おしくて、ゆったりと心を寄り添わ せて進んでいった。

中学に入り仲のよかった3人のバランスがジワジワと崩れだす。性の目覚め、身体の変化、 そんな自分に対する戸惑いや苛立ちの描き方が見事で、息詰まる想いが伝わってくる。
時に残酷な事を思い浮かべ、独占してしまいたい気持ちに捕らわれ、溢れる想いをぶつけ られないもどかしさなど、思春期の感情は複雑だ。

何より素晴らしいのは、表現力の豊富さ、言葉の威力だ。「れい」の思考の海を漂ってい ると、心の奥深くがえぐられてるみたいにキリキリと痛んでくる。生へのパワーがもっと も漲る時期、外へ向けられる何かがあればいいのだけど、それが叶わない時、内に向いた それは魂を蝕ませるほどの力をもってしまうのかもしれません。

もうあの頃に戻れないのは、3人が成長してしまったからしかたがないことだけど、やっ ぱり切ない。余韻が後を引く美しい作品である。

→著者別[国内小説]
→ジャンル別[青春・学園小説]
→テーマ別[詩的な小説][美しい風景描写][子供の情景]


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