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詩的な小説

瑞々しく澄んだ言葉も、物語に流れる空気もめいっぱい感じたくて、ゆっくりと味わいながら読んでいく。

詩的な文体で書かれた小説は、その分、読み手の読解力を必要とするものが多いけれど、読み終わった後もいつまでも余韻が残ります。

奥深くまで染み入る情景。研ぎ澄まされた世界観。移ろいゆく繊細な心の襞。洗練された美しい言葉は、きっとみなさんの心の琴線に触れるのではないでしょうか。

キーワード:テーマ別、本の感想、詩的な小説

1999年の夏休み
著者:岸田理生

森と湖に閉ざされた、全寮制の学院の夏休み。和彦、直人、則夫、帰る家のない三人の夏に、一人の転入生が現れた。薫。和彦に恋し、自ら命を断った悠に瓜二つだった。四人の少年のためだけに、いつしか時間はとまり、永遠の夏休みが始まる―。

ジェニーの肖像
著者:ロバート・ネイサン

1938年、冬のニューヨーク。貧しい青年画家イーベンは、夕暮れの公園で、一人の少女に出会った。数日後に再会したとき、彼女ジェニーはなぜか、数年を経たかのように成長していた。そして、イーベンとジェニーの時を超えた恋が始まる…詩人ネイサンの傑作ファンタジイ。

碁を打つ女
著者:シャンサ

満州の女学生と日本人士官の運命的な出逢いを描いた作品。1937年、日本軍と抗日軍の対立が激化する中、千風広場で碁を打つ人々。戦乱と危機のさなか、ここにいる時だけは、現実を忘れられる。広場で対局を続けるうち、いつしか惹かれあうようになる。

天安門
著者:シャンサ

中国の天安門事件を題材とした作品。荒々しい声、鳴り響く銃声、天安門広場の緊迫した場面から物語は始まる。民主化運動の女性リーダーである主人公雅梅と、捜索を命じられた若き将校の趙。罪人となってしまった雅梅とはいったいどんな人物なのか。彼女が残していったメモや日記から、孤独な幼少時代、引き裂かれた恋など悲しい生い立ちがみえてくる。

死都ブリュージュ
著者:ローデンバック

妻に先立たれたユーグは、ブリュージュに移り住む。悲しみにくれるユーグにとって、この憂愁漂うブリュージュは、静かに妻との思い出に浸れる場所。部屋には妻の所持品、肖像画など思い出の品がたくさん溢れている。

音符
著者:三浦恵

高校3年生の私・彼女・彼。友情と呼べるほど強い絆はないのに、惹かれあい近づき繋がっている3人。音楽室・図書室・美術室・廊下を射す光・グラウンドにできた影。学校の中にある一つ一つの光景が美しい青春小説です。

首飾り
著者:雨森零

秋(しゅう)と僕(れい)となな。二人の少年と一人の少女は、山あいの小学校分校で無邪気に過ごしていた。思春期になり、成長するにつれ奇妙な三角関係へと変わっていく。山、湖、森など豊かな自然描写と感情の揺らめきが美しい作品です。

いちご同盟
著者:三田誠広

中学三年生の良一は、同級生の野球部のエース・徹也を通じて、重症の腫瘍で入院中の少女・直美を知る。徹也は対抗試合に全力を尽くして直美を力づけ、良一もよい話し相手になって彼女を慰める。ある日、直美が突然良一に言った。「あたしと、心中しない?」ガラス細工のように繊細な少年の日の恋愛と友情、生と死をリリカルに描いた長篇。(裏表紙より)

悲しみよこんにちは
著者:フランソワーズ・サガン

高校生のセシルは、夏休みに父と2人で別荘で過ごしていた。 そこへ亡き母の友人であるアンヌが訪れる。父とアンヌが結婚するとつげられた時、父が遠くなったように感じる。2人が自分の届くことのできないところにいるのだと感じる。

丘の上のカシの木
著者:セシル・ディ・ルイス

こはく色の木もれ陽を裸いっぱいに浴びて、深い森のなかで祈りをささげる少女。丘の上のカシの木だけが、多感な少女アンナの恋のめざめを知っている。父親と二人暮らしのアンナの孤独な生活に、突然あらわれた美貌の兄妹と、時代への激しい怒りに燃える青年スティーヴ……。

深く息を吸って
著者:アンヌ=ソフィ・ブラスム

主人公は、19歳のシャルレーヌ。静寂が押し寄せ、過去を見つめ、自分の犯した罪と向き合い静かに夢想する――そんな独房の夜から物語は始まる。どこまでも暗く、孤独で、それでもなお人を殺した事を後悔していないという彼女。

人生の小春日和
著者:ジョン・ゴールズワージー

楡の葉や雑木林の若木が明るい陽射しきらめくのや、水面に広がった睡蓮の葉がつややかに光るのを愛で、麦畑の銀色のつぼみを眺め、ムクドリやヒバリのさえずりに耳を傾け、草を食むオルダーニー種の雌牛が房のある尻尾をゆっくりとはじく音を聞く。 こんな美しさを感じながら、85歳になるジョリオンは息子夫婦と孫と暮らしています。

リンゴの木
著者:ジョン・ゴールズワージー

銀婚式の日に妻と英国南西部の田園を車で旅する上流階級出身のアシャーストは、途中ある村に立ち寄る。そこは26年前、彼が村娘ミーガンと恋に落ちた場所だった。当時は駆け落ちまで企てながら、結局身分差を理由に彼女の元から逃げ去ったのだった…。

ザ・ロード
著者:コーマック・マッカーシー

破滅した世界、灰に覆われ荒れ果てた地、すべてが絶滅し生き残った人々。 寒さと飢えに苦しむ父と子は、ひたすら南へ進む。 無人となった廃墟に食べ物を求め漁り、衣服や毛布を持ち出し、寒さをしのぐ。 この崩壊した世界では、生き延びるためというよりも、生き残ってしまったため、いつくるかわからない死というものに向かって今を生きている印象。

黄色い雨
著者:フリオ・リャマサーレス

アイニェーリェ村と呼ばれる小さな村の過疎化。 村人がどんどんいなくなり「私」は1人取り残される。忘れられた村、だんだんと朽ち果てて崩壊する村、沈黙と静寂に包まれ、「私」は孤独になっていく。

見えざる神々の島
著者:ベン・オクリ

主人公である青年の姿はみえない。「見える」こととは何かを知るために旅に出る。たどりついた島には、人の姿はみえない。だけど気配が確かにそこにあり、声が聞こえるのだ。そこで彼を待ち受けていたものとは・・・・・・


著者:アンナ・カヴァン

異常な寒波のなか、夜道に迷いながら、私は少女の家へと車を走らせた。地球規模の気象変動により、氷が全世界を覆いつくそうとしていた。やがて姿を消した少女を追って、某独裁国家に潜入した私は、要塞のような「高い館」で、絶対的な力で少女を支配する「長官」と対峙するが…。

裁縫師
著者:小池昌代

広大なお屋敷の鬱蒼とした庭の離れに、アトリエを構えるひとりの裁縫師。彼は、富豪のお抱えとも、息子だとも、愛人だとも噂されていた。ある日、9歳の「わたし」は、自分の服をあつらえてもらうために、母に連れられて裁縫師のもとを訪れる。採寸され、数日後にひとりアトリエを訪れた「わたし」だったが…。

銀の匙
著者:中勘助

子供時代を思い浮かべる時、当時の断片的な記憶や、その時感じたことは覚えていても、それをみつめる大人になった自分の視点がどうしても入り込んでしまうものだと思う。だがこの作品にはそれが感じられない。まっすぐな子供だけの目線で、鮮やかに語られている。

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